今回はアニメ映画「PSYCHO-PASS Sinners of the System Case.2 First Guardian」について。


久々のエントリーですが、いやまぁ……面白すぎて、言いたいことが色々あるんですよ。言葉にしないとと鬱憤が溜まってしまいそうなので、発散させていただきます。

オリジナルTVアニメシリーズとしてスタートした「PSYCHO-PASS」シリーズ。人の数値を測れるようになった未来の刑事の活躍を描く本シリーズは、野心的で啓蒙的でストイックな作風でヒットし、今回はその新展開として作らた劇場作品3本の内の1本。

前作Case.1 罪と罰は、サイコパス特有のサイバーパンクもの特有のSF的毒と熱血刑事アクションとしてエンタメとして優れたアニメでした。

しかし、今回のCase.2 First Guardianはこのシリーズにある洋画顔負けのドラマにキャラクターも、ホンも、音も全振りしたアニメだからこそできる芳醇でいぶし銀で贅沢なブランデーのようなドラマとして成っていました。

時間としては1時間しかないのですが、その短い時間に凝縮された男の魂が濃く、並大抵の2時間映画より熟成された時を感じました。元から1時間に収まるようにと設定されていたらしいのですが、59分59秒に収めたという凄技。

主人公は、サイコパス1期で主人公を支え、同じく刑事の息子の前で殉職したとっつぁんこと征陸智己(cv.有本欽隆)と、2期からメインとなる公安局刑事課1係所属となった須郷徹平。サイコパス1期より前の物語です。

サイコパスで主に描かれる刑事は、人を数値化して測量するシステム、シビュラシステムに適正認定で認められた監視官と、犯罪的思考はあるが刑事としての適正を認められた執行官。事件を分析する分析官に分かれます。

とっつぁんも須郷も執行官に当たりますが、サイコパスが濁る前の須郷がまだ国防省でエースパイロットを務めていた時代の話。

第三次大戦で崩壊したシビュラシステム外の崩壊した世界を鎮圧するため沖縄で活躍する須郷が所属した特殊部隊に起こった悲劇から物語は始まります。
その悲劇から派生したテロを操作する為に、とっつぁんは須郷のいる特殊部隊がある沖縄に監視官 青柳と降り立ち、須郷は証拠からそのテロの容疑者としてとっつぁんたちに監視される関係に。

今まで無口で真面目な刑事としてバックボーンも語られることになかった須郷には、サイコパスらしい悲惨で陰惨な過去がありそれを描きつつ、既に殉職したとっつぁんの熟練の刑事の魅力をパーソナルに迫り、余すことなく描き、2つの男のドラマが交差する。このエモーショナルなるなスパイラル構造のドラマが重く惹き付けられました。男ならぜったい好きです。こんなの。

キャラを飾る台詞回しが、とっつぁんなら凄腕の熟年の刑事と刑事らしい家族に頭の上がらないドラマを持った1人の父親から発せられる素晴らしい台詞ばかりで、須郷も頭が固く優しい軍人としての台詞で、青柳や他にメインとなる須郷の上官の大友も、それぞれがらしい台詞を自然に吐いて、人が伝わる、心に響くいい台詞ばかりでした。

サイコパスの分かりやすい魅力は、タイトルから連想する通り酷いお話ばかりなんですね。でも、その中に一筋でも光るものがあって、それが凄く眩いんですよ。
今回もアニメでここまでやるのかってくらい容赦ない陰謀に塗れた事件で、驚くような事実もあって目を離したいけど、目を離せない。
そこにある人もくたびれてたり、復讐に駆られてたりする訳ですが、けど、だからこそとっつぁんが刑事にかける信念や、須郷がそこに見出す可能性が日の出の光の様に眩しい。
それを示すラストシーンの情景は、絵1枚で美しいドラマと物語っていました。

主題歌の曲がEGOISTの「All Alone With You」という曲ですが、この曲とドラマの相性も素晴らしくエンドクレジット含めてこの作品です。

TVシリーズから始まった本シリーズは、シリーズ重ねる事に作画もクオリティが向上していって、そこも見所です。
特出すべきは、研ぎ澄まされた人間の動きの追求から出される格闘アクションとブレードランナーのシド・ミードの提示したサイバーパンクと現代感と荒廃感が融合した優美で危うい美術。

特に今回は沖縄が舞台なので、それなりに現代と遜色ない沖縄があるんですけど、サイコパスの世界はシビュラシステムがある環境下以外は内戦などで破壊されていて……やりその痕跡はあり、ビル群が海に沈んでいるようなカットにハッとさせられるます。あと東京のブレードランナー的にサイバーパンクな街並みも出てきて、沖縄と都心の差もシーンの移り変わりで見てて飽きないですね。
スーパーハイテクドローン戦闘機がマングローブを上と下と飛んでいくシーンもかっこよかった。
沖縄を描くからには日の光の表現にも力を入れたようで、元からサイコパスはその辺の光の色彩表現も非常に面白い作品で、とっつぁんのある一軒家のシーンは暖かい光に包まれてて人として当たり前の心にじーんと来ました。

作画が凄ければ音の作り込みも音響の執念なるものを感じて、最初から本物の飛行機のジェットエンジンから取ったような轟音、繊細で水面に落ちた音や物に当たった反響音まで拾ったようなリアルすぎる雨の音。
ただリアルなだけでなく、聞いてるとドラマを引き立てる為にケレンさを足されることに気付くんですね。Cace.1も洗練されていたのですが、そっちはエンタメとしての音を作っていて、Case.2は静寂すらも使ってドラマを作ることに徹底していて心地いい世界でした。

また声優さんも洋画の吹替えを良くされている方を起用したそうで、声だけで濃密なドラマを作ってるのですが、特にやはり有本さんの年を重ねた渋さは他になく、塩谷監督はその人はこのキャラとしか思えない。選出した時点でディレクションは終わっているというほどのキャスティングでして、征陸智己は有本欽隆さんとしか言い様が無かったです。

日本のアニメというジャンルは、どんどん簡単に分かるアイコンからくるキャラクター性に依存したようなコンテンツがニーズになっていきますが、アニメでもここまでドラマというものに腐心できるんだ……個人的にはそれを提示してくれた1作。何から何まで貫徹して、そこにはドラマしかなかった名作です。心にずっと持っておきたい。

https://youtu.be/1aRjfmX1GbM



ここからは映画に関係ない言い訳。
前回のブログではゴティックメードについて〜……なんて言ってましたが、いやほらタイミングとかね?ブログとか書く時間取るのも大変で……。いや言い訳です。

こうゆうのは職でもなければ、ほんと気が向かないと継続するのは難しいですね。
今回、エントリーしたということは気が向いたというわけです。それまで観た映画が別につまらなかったというわけではないんですが。Twitterでばーって書いて満足しちゃうんですよね。今回はそれに収まらないほどだったと言うことです。

これからも気ままに更新していきます。