これは、先輩同士の恋愛を微笑ましく見守る後輩の話である。



「由依ちゃん、一緒に外回り行こうよー」



パソコンに文字を黙々と打っていると、理佐さんと由依さんがいつものようにイチャついてる声が聞こえてきた



「一人で行って来てください」

「今日は、ひかるちゃんに色々教えなきゃいけないので、忙しいです」



振り払われた手を悲しそうに見つめている


「今日の由依はケチだよ」

「ケチ」


その後もケチケチと言い続けている理佐さん


ため息をつきながらも、顔は喜んでいる由依さん



「由依さん、これってどうすればいいですか?」



やっと戻ってきた由依さんに質問をする


お昼は1時間みっちり休憩時間を使っていたから、
理佐さんといつものお蕎麦でも食べてきたんだろう


「これはね、ここをこう書けば大丈夫!」


微笑む顔が眩しい、、



「ねぇ、ひかるちゃん」

「由依に教えて貰えるとかいいなぁ」


ケチケチとつぶやきながら、理佐さんがやってくる


「あぁもう、わかりました」

「私も行きますから」

痺れを切らした由依さんが、カバンを持つと
理佐さんの顔がパァっと晴れる


「由依さんも嬉しいくせにぃ」


「ひかるちゃんなんか言った?」


怖い怖い…

つい、事実を口にしてしまった



「いえいえ、どうぞお気をつけて」


「ふぅ」

隣に誰もいなくなり、パソコンに目を向ける


「ねぇ、由依ってさ初めは理佐が嫌いだったんだよ」


暇なのか、由依さんが居なくなったからなのか、


土生さんがトコトコとやってきた


「ほんとですか?」


「由依はね、ちょー真面目で」


「反対に理佐はあんな感じじゃん?」


「だからさぁ、不真面目な理佐を嫌ってたんだよ」


「理佐は悪いやつじゃないしさ、」
「要領がいいのよ」



「はいこれ、」

チョコと飴をどったり手に乗せられる



「理佐さんって休むの上手いですよね」


理佐さんは、ダラダラしてる印象があるが
仕事はきっちりこなしている



「まぁ、それに憧れて由依も休むの上手くなったんだよ」


「今は両思い同士ってわけだよね」


ハートの決めポーズを決めてそそくさと席からいなくなった



「理佐さん、早く動いてください」
「外回り終わったんですから」


はぁ、これだから理佐さんと行くのが嫌だ


「そんなカリカリしない」
「可愛い顔にシワができちゃうぞ」


毛穴ひとつない理佐さんの顔が近づいて来て、体温が上がる


「ちょっと、」


眉間を指でグリグリさせる


「さぁ、そろそろ動きますか!」


急に近づいてきたと思ったら、
自由すぎる人だ


「ねぇ、ずっと耳赤いよ、由依」



「ベ、別そんなことないです」



気づいてはいた、気づいてるし、


「こういう時は、もっと体温あげなきゃね」


意地悪そうな顔がちらりと見え
右手を繋がれる


「なんですか、これ」


運転中の理佐さんなんて、お構いナシに繋がってる手を見せつける


「由依ちゃん、恋人繋ぎも知らないんでちゅか?」


ちょうど赤になったのが最悪だ

赤ちゃん言葉でバカにされる


「じゃあこういうのも知らないか、」


さっきとは違う、
顔がどんどん近づいてきて、

プルっとした唇が近づき、理佐さんの匂いが強くなる


「し、知ってますし、なんでするんですか!」


急いで手を振って、離す


「これなんて言うの?」


「ちゅーですよ!」


最大限の怒りをぶつける

でも、なぜか笑われる


「ちゅ、ちゅーか、」
「可愛いね」



「キスだよ、キス」


「同じ意味ですから!」


ブツブツと文句を言っていると、会社に着いた


一刻も早く、ここから逃げたいが
先輩なので、降りるまで待っておく


「由依さ、早く私の気持ちに気づきなよ」
「素直になりな」


「運転ありがとうございました」


被せるように言葉を言う


急いでシートベルトを外し、エレベーターに乗り込む


「待って由依、」


走ってきた理佐さんが私の隣にくっつく


「手、繋いでよ」


手も繋がれて、初キスを奪われて、頭がパニックな私は、素直に手を繋いでいた


「おかえりなさい、由依さん」


いつもだったら、笑顔対応してくれるの

急いでどこかに行ってしまう



「いやぁ、これは面白くなってきましたねぇ」


ニヤニヤしながら、土生さんが近寄ってくる


「どうしたんですか?」


「あの2人なんかあったよ」


あれから、由依さんが理佐さんにくっついているのをよく見かけるようになった


「百合好きにはたまらん」


いつもより仕事のスピードが上がった私でした