いつもの帰り道
いつもだったら2人で手を繋いで帰っているのに今日はひとりぼっち
初恋の人と結ばれる人生を歩めることはできないのだろうか
見慣れた背中をだだ見つめているだけ
小さくなっていく背中を呼び止めたくて
私は走り出した
抱きしめられていた細い腕を掴む
「夏鈴、行かないで」
呼び止めていい事は起こらない
また苦しい日々が始まるだけ
「由依が別れよって言って私は納得した」
「由依の選択は間違ってないよ」
夏鈴は彼女がいてもセフレを作る人だった
それで私は人を信じれなくなったし、期待をしない人間になってしまった
「由依は私といたら幸せになれない」
「じゃあね」と言って掴んでいた腕を手でそっと振り払われる
あれから私は遊んだ
夏鈴の気持ちが知りたくて
アプリで顔を晒して、一緒に遊んでくださいなんて書けば色んな女の人から連絡が来た
今日もそういう人と遊ぶ
「ねぇ酔っちゃった」
「ホテル行こ」
居酒屋を出てラブホ街に向かう
水を片手に理佐さんと腕組みをする
「私の家来なよ」
腕組みが離れ、ギュッも握られる
酔っていた脳が一瞬でシャキンと元通りになる
「色んな人と遊んでるんでしょ?」
「こんな遊びやめてさ」
「私の彼女になってよ」
酔いなんて覚めてこの場のいい返事を探す
「知らない相手に家なんて教えたらダメですよ」
酔ったフリをして聞かないフリをして話を逸らす
「私の彼女になりなよ」
久しぶりに感じたドキッとしたトキメキ
このままお酒の酔いに任せた恋愛を始めてもいいのだろうか
この遊びを始めたきっかけは夏鈴の気持ちが知りたくて始めた
だからこういう恋愛を始めてもいいんだ、
頭でぐるぐるしていた考えをやめて理佐さんにキスをして答えた
あれから1ヶ月が経とうとしていた
初めは好きなのか分からないまま過ごしてきたが1ヶ月が経てばそれなりに彼女のことを好きになることができた
「コーヒーとパンケーキください」
理佐の会社の近くで、仕事の終わりを待つ
いつもの日常だと思っていた、、
「私も同じのください」
後ろから聞こえてきたその声は何度も私の名前を呼んだことのある声
好きと呟かれた声
ぼーっとしている間に支払いは夏鈴が済ませてくれていた
「テラス行こ」
YESもNOも言う前に手を引かれていた
「ごめん」
「突然見かけて、素通り出来なかった」
「あのね、遊びもうやめたんだ」
「由依がいなくなって私由依がいなかったら生きれないって気づいた」
「もう、戻らないよ」
その続きを言われる前に知らない間に声がでていた
その声は自分でも驚く程の低く冷たい声だった
「別れてから夏鈴の気持ちが知りたくて遊び始めた」
「好きでもない人とご飯を食べて、らぶほ行って」
「そしたら、止めてくれる人がいた」
「もう付き合ったの?」
子犬のような表情をして寂しそうな顔をしている
「私は信じたいの、期待したい」
まだ理佐のことを信じることはできていない
今このまま夏鈴と曖昧な関係を続けたら私は理佐を裏切ってしまう
「もう私の前に現れないで」
注文した食べ物のことなんて忘れてお店を出た
「由依、」
1番今目の前にいて欲しくなかった人
「今会ってたの元カノだよね?」
理佐の期待を裏切ってしまった
「これは違う、」
「わかってるよ」
「早く帰ろ」
怖い、
浮気とかしたくなかったのに
玄関のドアを開けると理佐が抱きついてきた
「ちゃんと解決できた?」
「自分でも知らないうちに、もう戻らないよって伝えてた」
「私ね、理佐のこと信じたいし、期待したいの」
ぎゅーっとされた腕を掴む
「信じてもらえるようにちゃんと伝えてくから」
夏鈴とするよりも愛を感じて気持ちのいいキスだった
「理佐、愛してる」
付き合って初めて理佐に言うことができた
「私も愛してるよ、由依。」
恋愛の始め方なんてなんでもいい
信じて期待していい恋愛もあるんだ