帰りの電車を待つ間今日の出来事を思い出す




「かわいい」




その言葉を小さい時から言われていた



小学校、中学校、高校もある程度の地位を得て、告白された回数は2桁を超えていた





大学に行ってもそれは変わらず、友達も恋人も手に入れた





なのに、なぜ、、




今日の朝、大学に行くと友達に見せられたのは彼氏が見知らぬ女の人と抱きついてキスをしている写真だった、





問い詰めて言われた言葉は、





「バレたか、ごめん」





「はぁ」




こんな別れ方をするなんて思わなかった
愛されていると思っていた、









悲しくて、辛くて友達と終電ギリギリまで飲んでしまった




「ぎゅ、、」





インスタのストーリーを見ていたのに突然視界が真っ暗になった





「え、」





手で退けようとしても強い力で抱きつかれていて離れることが出来ない




「寂しそうな顔してたよ」




耳を澄ますと、女の人の声が聞こえてきた




「離れてください」




いい匂い、このままもう少し抱きついてくれないだろうか、



でも人の目もある




「もうちょっとだけこのままでいようよ」




「誰かに見られてたらどうするんですか、」




もう一度離れようと試みるもそれはこの女の人の力が強くて無理だった




「終電の電車もう行ってるし、誰も居ないよ」




「抱きつかれてて分かりません」




離れろと言わんばかりにスマホで女の人の胸を押す



「なんかあったの?」



最終電車が過ぎ去って遠くで走ってる音がする



「見知らぬ人に話す筋合いはありません」




距離が近いのを遠逃せるためにあと一歩後ろに下がる



「でも泣いてるよ?」




人の温もりがそれほど良かったのか、知らない間に涙が出ていた



「泣くならうち来なよ」



私の意思も確認せず、改札の方に手を引かれる





「お酒の匂いするから20歳超えてるよね?」




「まぁ、」



なんで離さないんだろう、変な人に着いて行ったらダメなのに



お酒に身を任せて隣を歩く





「私も飲みたいし、コンビニ寄るね」




お酒を何本かカゴに入れ、レジに行くと慣れているようにタバコの番号を言っていた




「お邪魔します」




自分からこの人の家に来たわけじゃないけど一応一言行ってから入る



「お姉さん名前は?」





自己紹介をされないため、私から聞く




「渡邉理佐」



「んー、理佐でいいよ」




「何歳?」



失礼ながらに聞いておく



「25」



自己紹介に興味がないのかスタスタと冷蔵庫に買ってきたもの詰めている





「君は?」



「小林由依です」
「20歳です」

 

「ん、はいこれ」




素っ気なくお酒を渡される



「飲むでしょ?」




棒立ちになっていると理佐さんの缶が私のに当たる




「まぁ座りなよ」




「なんで抱きつくんですか」




お酒を黙々飲んでいるとまた覆い被さるように抱きつかれる







「泣きたいかと思って」





「別に振られただけです」





目が合った瞬間にドキリとして、熱くなった
手でほっぺたをぎゅーと挟まれる





「由依可愛いのに、その人見る目ないね」




そんな言葉嬉しくないと苛立ちが芽生える




「忘れたいんで、タバコ1本ください」




コンビニの時に理佐さんが入れていた袋を指さす



「タバコに逃げるのは良くないよ」






そう言っている割に、カチッとタバコに火をつけ理佐さんは吸い始めた






「いいじゃないですか、1本くらい」






吸い方も火の付け方もよく分からないけど、箱から1本取り出して、理佐さんの手からライターを取り上げようとした





「じゃあこっちにしなよ」




ライターが上手く使えず苦戦していると唇に温かいものが被さった




咄嗟に目を閉じると、口に苦いタバコの味が純満した




喉がイガイガとして、咳き込む





「ごほっ、」




それでも苦い味は消えなくて、涙目になる






「まだお子ちゃまには早かったか」




5歳しか変わらないのだからお子ちゃまとはなんだよ




ムキになって、ライターをもう一度手に取る





「うるさい、これくらいできるし」




「あれ、、」





「タバコなんて使わずに忘れさせてあげるよ」





さっきまで隣にいた理佐さんは私の目の前にいた




それに、私の肩が地面についていた





息を吸い込むこともできず、理佐さんが私にキスをしてくる



「ちゅっ、」



息を吸い込もうとしたら舌が中に入ってくる





肩を叩いても足で蹴ってもビクともしない、




「ちょっとは大人しくしてなよ」






さっきまで優しかった理佐さんの表情は狼のようだった




「んッ、ん、、」




私の舌と絡め合い、歯がなぞられ、息を吸い込む暇がない




それなりにキスはしてきたつもりだ
キス以上のことも経験してきた






なのに、それを塗り替えるくらいに理佐さんのキスはとてつもなく甘い





さっきまでタバコで苦かったのに甘く感じる





息ができない苦しさが気持ちよさに変わる





「かわいい」




そこからのことは、覚えていない





でも、まだ出会ったことのないくらいの快感に身を任せていた気がする




「おはよ」




朝、目が覚めるの理佐さんが私の隣にいた




「おはよ」




まだ完全に目が覚めてなくて、声が出ているのかも分からない




「どうだった?」




にやけるように聞かれ、何に対しての質問かもわかっている




だが、ここで素直に答えたら負けたように感じる




「何が?」






「んー」
にやけた顔をして理佐さんが近づいてくる





ブラを上に上げられ、抵抗する前に中心を理佐さんに摘まれる




「どうだった?」





「んッ、、」
「別に」




昨日の快感が体に染み付いていて、少し触られただけで体が勝手に動く





「素直じゃないなぁ」




キスをされると思って顔を背けようとすると上に乗られ、難なく深いキスをされた





「んッ、」




深いキスと胸の中心の手が合わさると頭が真っ白になりそうになる




「私とのえっちはどうだった?」





「気持ちよかった」



冷静さを保って答えられたと思う




「そっか」



聞きたい言葉を聞けて満足なのか



ベッドから降りて私を置いていこうとする





「1回きり?」




自分でも何を言っているのか分からない
だけど、これで帰ったら後悔しそうだ






「じゃあ週3でどう?」




振り返らずに髪を括りながら言葉が返ってきた



そんな関係なんていらない
ただの体の関係を求めてるわけじゃない





「そういうのいらない」




少し期待していた自分に落胆して、ブラを直す





「じゃあ私たち付き合う?」




お願いしますなんて言葉を言えるような性格をしていない



「もういい」



ベッドから降りて理佐さんを追い抜かし、扉を開ける




「私と付き合ってください」




「昨日会ったばっかりだけど、一目惚れしたから」




後ろから抱きつかれ、耳元で理佐さんの声が脳に直接刺さる





「仕方ないから付き合ってあげる」



「これからよろしくね、由依」