「由依さん、、」



練習が終わり、みんなぞろぞろと帰っていく



保乃が帰り夏鈴ちゃんと2人になったところ急に後ろから抱きしめられた



「夏鈴ちゃん?」



強引にでも、優しく
ふんわりと夏鈴ちゃんの匂いが鼻に通っていく




声をかけても後ろから声が聞こえてこない



「保乃帰っちゃったよ?」




いつも保乃と帰るのに後ろをついて行かない夏鈴ちゃんに声をかける





「今日は由依さんに話があるんです」




そういうと地べたにゆっくりと抱きしめられたまま座る




「最近の由依さんはしんどそうです」

「前みたいに笑顔がしんどくなりますよ」




優しい声が心をぎゅっと縛る




最近、舞台も始まって慌ただしい毎日を過ごしてきた


疲れも出てきたけど、慌ただしい毎日が楽しい





「由依さん、慌ただしい毎日を楽しいって感じたらダメです」

「危ない罠です」




心を読まれた




「私でも理佐さんでも、メンバーでもいいから、頼ってください」




そういうと抱きしめられていた手が離れた



「ほら、早く帰らないと置いていきますよ」




優しい夏鈴ちゃんから素っ気ない夏鈴ちゃんに戻ってしまった




置いて行かれないように私も準備をして練習室のドアを閉める




「あれ、、」



見覚えのあるキーホルダーが廊下の真ん中に落ちていた




「由依さんどうしました?」



「なんでもない」



そう言ってキーホルダーを拾ってマネージャーさんが待っている駐車場に足を進める




さっき拾ったキーホルダーの後ろにはYと書いた私の字がある




これは私が理佐にあげたものだ
ここに理佐が来たんだ






「ねぇ理佐」
「今日、練習室来たでしょ」




帰ってきてテレビを見ている理佐の目の前にキーホルダーを突き出す




「あ、無くしたと思ってた」



良かったなぁと言いながら、それを受け取り、カバンの方に行こうとする




「ねぇ、いつ来てたの?」



キーホルダーを理佐に返すのが目的じゃない




「行ってないよ」



平気で嘘をつく




「由依のカバンとかに引っかかっててとかじゃない?」



ばかなことを言う




「ねぇなんで練習室来たのに声かけてくれなかったの」



ソファーに戻ってきた理佐の手を思いっきり掴む




「じゃあ彼女が他の女の子と抱きついてて、どう声をかけるの?」



「久しぶりー夏鈴ちゃんって声をかけたら良かった?」



見られてたんだ、、



「こうやって付き合って、嫉妬もして喧嘩もして、、」



「でも、大人になって由依は私のことが大好きだからって安心したから私は卒業した」



「なのに、何してるのって修羅場になるの嫌だし」



何も言うことがなかった
それを見た理佐が抱きしめてくれた


「怒ってもないし、嫉妬もしてない」
「アルドルは助け合いだから」

「声をかけなかったのは、その光景を崩したくなかったから」


「由依が夏鈴ちゃんと仲良くしてるのはいいことだから」




改めてこの人を選んで良かったと思う
心が広くて、私の幸せを願ってくれる人



「ちゅっ」



幸せに浸っていると唇が奪われた




「こうやってキスできるのは私だけだから」