好きな人ができたと
頬を赤くし頬笑む少女はいった
さようならも言わずに振り向きもなく
通り風のように髪の毛を揺らしながら走り出した
愛もなく告白もなく握った手の覚えもないのに
なぜよかったねという唇は乾いていくのか
風も連れ去ったのかあつくるしく胸が騒いで
空を見上げると一点浮き雲に涙がこぼれる
誰に恋して雲は流れもせずに留まり
来る日も行く日も視野に見えてくるのか
誰なのきいたらあの子と指差すかと不安で聞けなく
ただただだめ息を吹いて雲を膨らませるばかり
はっきりというべきだったと心が攻めてくる
しってかりと伝えるべきだったと胸が病んで来る
戻れない川の向こうに渡った少女に揺れる髪の毛が
胸を漕ぐように弾き出して雲が追っていく
あの川を渡ればと念を託し願いを乗せても
雲は川の上でうねるばかり
もうもどれないと諦めたとき
胸を抉るさよならをつぶやいたとき
雲が涙を零す
川は無心に流れていく
花言葉は 静かな別れ