霧の中を歩いていく
静かな足音を追っていく
寝顔に囁くように告げられた別れ歌は
聞いて覚えて胸に打ったれ鼓動になって
せめて霧が終わる何処まで送る心持ちで
ただただ足音だけを聞いている
確かにそれは他人かもしれない
どこかで又別れた恋人たちが歩いていくのかもしれない
そして同じく霧の中に迷ったせいにして別れを悲しむ
行く人もおう人も迷ったせいにして霧の終わりころに会えるかも
静かに胸が弾き出す
耳が鋭く乱れ足音を探して澄まして行く
心がゆらりと舞い上がる
鼻歌が霧を躍らせる
ゆっくりと霧が宙に上がり
一人窓際に立っている
恋は去った
霧と共に美しく天に昇った
寂しくも侘しくも悲しくも切なくもない
いつだって会いたいときに空を見上げられるから
想いは見下ろして語る
あの別れは迷わなかったと
そばにいて苦しむより
むしろ離れて見届ける方を選んだと
そして会いたくて耐えられないときには
また窓を開けて朝霧を広げて耳を澄ませばいい
あの人が静かに歩いていく
だから静かに見送る
静かに悲しみを乗り越えるあの人のように
俺も静かに別れを歌ってあげればいい
花言葉:静かな悲しみ