昨年来の風邪がなんとか一段落。鼻の奥のむずむずと頭痛が少し残っていますが、元気になってきています。
そんな中、5日日曜日に昨年末に出丸師匠と健康亭生きがいさんからご依頼いただいた「広場寄席」に出演しました。
「広場寄席」は、兵庫県加古郡播磨町でボランティアの方がたによって年2回開催されている落語会です。播磨町議であった健康亭生きがいさんの肝いりで、出丸師匠が毎回出演しています。今回は、笑福亭風喬さんも出演されました。
そして、毎回東梅田落語倶楽部からもアマチュア落語家が出演させていただいていて、今回は不肖私が出演することになりました。
妻と一緒に自宅を9時過ぎに出発。梅田地下街のオアシスで切符を購入(二人往復で1,000円も安かった)。土山に向かう新快速は比較的すいていて、車内で腹ごしらえのために家から持参のおにぎりと「ららぽっぽ」のスイートポテトをいただきました。
午前11時30分にJR土山駅で、出丸師匠風喬さんらと待ち合わせ。お昼をいただくために生きがいさんの車で「わびすけ」へ。このお店は昨年、出丸師匠が講師をしている3つの教室合同の「てっちり打ち上げ」を開いたところでもあります。ここのカレーうどんはなかなかのお味。スパイスとだしのバランスが絶妙で、うどんもコシがあって美味。妻も私も道中で結構食べたのにもかかわらず、ペロリと平らげてしまいました。
会場は、播磨町中央公民館大ホール。約300人のお客様。「わびすけ」の大将と奥様、かがやき亭未来さん、春暁亭不覚さん、猿山亭もん吉さん、浮かれ亭ポンチ(鹿ノ瀬真太鼓)さんとフィアンセでクレイドール作家のごとうゆきさん、このところ出丸師匠の会皆勤賞のみやけんさんらも遠路はるばるお越しくださり、ありがとうございました。
大勢のお客様の前で落語をするのは、大学時代以来です。怖いもの知らずの若者だった当時と違って、人生の機微も少しはわかるようになってからの300人のお客様に、出番前はなんだか自分の体が自分のものでないような気分に襲われて過度に緊張しました。
出丸師匠:「東二さん、『緊張してます』とか絶対に言わないようにね」
そうですよね。お客様に不要な緊張感を与えてしまいますし、ましてや自分が下手であることをカミングアウトするようなものです。私はこの際、自分がアマチュアであることも言わないことにしました。
もちろん出番は前座です。出囃子に促されるように高座に。舞台そでから私が登場するとお客様から大きな拍手。
不思議なもので、この拍手のお蔭で私の緊張はとても程よいものになりました。
「菱乃家東二と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
するとまた大きな拍手。
「いやいや、ごもったいない。ごもったいない。お手にお怪我はございませんか」
結構これが思ったよりもウケて、この後のテンポがつかめたように思います。後は、できるだけゆっくりしゃべること程よい間をあけることを心がけて…。
ここで、大変不思議な体験をしました。いままでは、どの順番で客が道具屋にやってくるか注意深くカウントしていないといけなかったのですが、この日は次から次へと自然にそれもテンポよくお客がやってくるのです。
「おい、道具屋」
「へい。ずっとお入り、ずっとお入り…」
「道具屋さん」
「へい」
「電気スタンド見せて」
「はいはい」
「そこなる道具屋」
「へいいらっしゃい」
「ちょっとパッチ見せてんか」
「言うとくけど、このパッチ、ションベンできまへんで」
ちゃんと覚えているということもあるでしょうが、お客がちゃんと前に立ってあれこれを見せろと言ってくる。順番に間違いがない…。
「手元見ております」
とても気持ちいい大きな拍手をいただきながら舞台袖へ。風喬さんと交代しました。
【第11回広場寄席】
■と き:2月5日(日) 午後1時30分開演(1時開場)
■ところ:播磨町中央公民館大ホール
■演目と演者(敬称略)
○「道具屋」 菱乃家東二
○「試し酒」 笑福亭風喬
はじめて実演を観ました。杯の仕草など大変勉強になりました。風喬さんの久三さんは九州弁でした。
○「天王寺詣」 桂出丸
見台なしでやりにくいだろうなぁと思いましたが、そこはプロですね。「彼岸てイタチによう似てますなぁ」を「イタチに似てますなぁ彼岸て」などテレコになったところもありましたが、難なくサゲまで。
中入り
○「鉄砲勇助」 健康亭生きがい
前日自転車で転んで腰を悪くされたと聞きましたが、さすがの貫録。お客様も安心してご覧になっておられましたよ。
○「みかん屋」 桂出丸
ちょっと「道具屋」とネタがつきますが、全然知らん顔でやってはりました。
私には「前座ネタ」の持ちネタがひとつしかありません。それは、ECC落語教室時代2つ目に覚えた「道具屋」だけなんです。
実は、この「道具屋」には30年前に恥ずかしい思い出があります。
高校時代、落研の秋の寄席を後輩たちとともに開いたとき、私は「道具屋」をかける予定でお稽古していましたが、どうしてもものにならず、当時大好きだったネタ「崇徳院」をトリにかけました。
しかし、終演後顧問の先生から「チラシにも載せているネタをかけないのはけしからん!」と大目玉をくらいました。そりゃそうです。この日の寄席には「千両みかん」など内容がダブる(いわゆる「ネタがつく」)ネタが先にかかっており、そのあと「崇徳院」ではお客様は納得しないでしょうし、そもそもお稽古していないこと自体が許されるはずがありません。
そして、先生からあらためて「道具屋」を寄席出かけることを約束させられ、秋の文化祭=FAF(布施アートフェスティバル)の「神無月寄席」で再び演じることになりました。
しかし、この寄席には顧問の先生が特別出演することになっていて、出番は私の直前。会場超満員の中「悋気の独楽」で大ウケしている後に出たところ、お客さんはほとんど帰るわ、ウケないわで、私はとても落ち込んだのでした。
このネタは、この文化祭以降封印してきたのですが、40歳を超えて再び落語のお稽古を始めた時、「崇徳院」と「道具屋」はもう一度一からちゃんとお稽古しなおしたいネタとして心に秘めていたところ、出丸師匠からのすすめで期せずして1番目に「崇徳院」を2番目に「道具屋」をお稽古しなおすことになったのです。
「道具屋」をかけた発表会には、ボス(山下芳生参院議員)もお越しくださり、その時の模様をブログに書いてくださいました。
そして、その後出丸師匠の前座で2度ほど「道具屋」をかけています。どれだけお稽古してもお客様の前でやらないと上手にならないんですね。
落語会の後、スタッフ&演者で後片付け。この会場のパイプ椅子は上等で軽く丈夫で片づけやすかった。「壇さん、これからウチもこれにしましょうぜい(「試し酒」より)
スタッフの皆さんにご挨拶して、会場を後に打ち上げ会場の「わびすけ」へ。たらふくてっちりとひれ酒をいただいて、M村さんの車で23時ごろ帰阪。