印鑑の製造販売と名刺、封筒といった個人とビジネスの双方で必要となる商材を扱う店舗を直営店で約20か所、フランチャイズで同140か所抱えるチェーン事業を経営されている事業家M氏は当方の外国人材紹介並びに定着化のサービスの説明を、興味を持って聴かれ、最終的に2名の外国人材を彼のチェーンに配属することを決断されました。

 

M氏の狙いは社内改革でした。 毎月一度、土曜日に行われる直営店長会議でM氏が感じていた日本人店長のマンネリ化と緊張感欠如の問題に対し、ハングリーでかつ日本人と異なる視点や発想を持つ外国人を店長として入れることで変革の狼煙を挙げられるのではとの狙いです。

 

そこで当社ではM氏に何度かインタビューを行い、彼が考える期待する外国人材の要件を聴取し、採用条件と共に英訳して外国人材が日本での求職で用いるウェブサイトに掲載しました。もちろん最初から店長にはなれず、数年は直営店の販売スタッフとして経験し、商品やお客様に慣れたうえで店と商品の仕入れを任されるというキャリアです。

 

海外では印鑑は使われず、署名中心なため、正直どこまでの外国人応募者が来るかわかりませんでしたが、豈図らんや、すぐに5名ほどの応募がありました。

 

その中から、日本在住であったインド人男性、ドイツ人女性そしてインドネシア人男性とまず当社が面接し、日本語能力や動機そして将来の人生設計などに問題ないことを確認したうえでM氏との面接に進みました。

 

インド人男性は他の会社からの内定が早かったことからそちらに就職してしまいましたが、M氏はドイツ人女性とインドネシア人男性を採用することにしました。

ただ、インドネシア人男性は一旦母国に戻って、ビザを取り直す必要があるため、現在日本側でまず在留資格証明(COE: Certificate Of Eligibility)を申請中の状況です。

ということで、ドイツ人女性がまずM氏の指示で都内の直営店に配属されることになりました。

彼女は日本の文化が大好きで、ドイツの大学を卒業後、青山学院大学に留学し日本文化を専攻、そのまま日本で就職するべく日本語学校に入って日本語能力を向上させようと努力中でした。 従い、その日本語学習が満了するまではアルバイトで店に通い、満了後は正社員として務めることを想定していました。

 

彼女の日本語能力は日本語能力試験(JLPT)でN3とN2の間くらいでしたが日本語学校での学習を通じN2以上を目指していました。

彼女が配属された店はM氏のチェーン事業の直営店の中で最も売り上げと利益を上げている店で、40歳そこそこの店長が猛烈に頑張っている店でした。

 

続く

このシリーズの最初の頃に触れたと思いますが、事業家M氏は印鑑の製造販売と名刺、封筒といった個人とビジネスで必要となる商材を扱う店舗を直営店で約20か所、フランチャイズで同140か所抱えるチェーン事業を経営されています。

 

M氏による内外の環境変化を先取りする進取の気性は、沖縄返還の際に実印販売で大儲けしたり、フランチャイズ組織の組成で事業を一気にスケールアップしたりといったところに遺憾なく発揮されています。

 

それはまた前々回お話しした印鑑の輸出用オンラインショッピングサイト事業にも現れています。 

そのM氏に外国人材起用を通じた組織内部の経営革新を打診してみたのが昨年末でした。有能な外国人材を起用することで、

①「グローバル化や少子高齢化といった環境変化の中で会社自身がまず変化し、環境変化を先取りする」というM氏のメッセージの本気度が日本人社員に伝わり、

②日本人の男性中心の均一性のもろさから異質混合による強さを実現するダイバーシティ(多様性)経営への変革の第一歩となり、③日本人同士では気づかない思考、習慣、組織のクセ、弱点が外国人材の視点のお蔭で見えやすくなり、そのハングリー精神と相まって日本人社員と組織を活性化してくれ、

④海外市場を狙う場合には言葉と文化の通訳者になってくれ、

⑤海外向けの情報発信もホームページやSNSでの外国語での発信を手助けしてくれ、

⑥外国人としての感性やニーズの理解に基づく海外向け商品・サービスの開発を支援してくれることになる、といったメリットをM氏に説明しました。

 

そして当社の外国人紹介サービスでは通常の人材紹介事業者が成功報酬として予定年収の何割かを頂戴するのに対し、成功報酬はゼロとし、採用後の定着支援のためのフォローアップ面談サービスを少額で提供するという内容を説明しました。

 

外国人材採用のリスクとして、日本人に比べ離職率が高い点が挙げられます。最大の理由はコミュニケーションギャップ、次いでキャリアビジョンの不足、そして研修不足に対する不満といわれています。このリスクを排除すべく、当社では月に最低一度、当社が紹介した外国人材と都内のカフェかスカイプ(遠隔地の場合)で面談し、就職後の現場で感じる不安、不満、懸念点などを直接聴取し、それを企業経営者や幹部にフィードバックし、改善すべきはすぐに改善しています。 一方で経営者や幹部側が外国人材に持つ懸念や不満があればそれを傾聴したうえ、わかり易く本人に伝え改善を促すようにしています。

 

当方の話を聞き終えたM氏はピンとくるものがあったようで、ご自身の考えを私に開陳されたのでした。

 

続く

前回、当社に務めるロシア人社員のA君について少し触れましたが、今回は彼の活躍ぶりをご披露します。

 

彼は日本に来る前にモスクワにある銀行に勤めていましたが、たまたま日本の総合商社のモスクワ駐在員女性と知り合い、結婚し、彼女の日本への帰任とともに来日したのでした。

 

彼は英語ができることから、来日当初は渋谷のアパレル店でインバウンド客向けの通訳接客対応の仕事を行っていたそうです。 その後、奥様の出産などを経て勤務時間帯が生活のリズムに合う職を探す中で当社に出逢った次第です。

 

当社入社直後は前出の事業家M氏と進めた印鑑の輸出用オンラインショップの受発注業務を担当したり、既存客先関連の請求実務などを担当したりと日本語と英語を駆使しながら色々な業務を担ってもらいました。

 

その間、当社のホームページの再構築やコンテンツのリニューアルを自発的に行ったり、ロシア人のデザイナーの友人を起用して当社のロゴを制作したりとクリエイティブな面で大いに貢献してくれています。

 

もちろん今の若者らしくSNSを使った販促活動などにも積極的に取り組んでいます。

 

せっかくのロシアとの縁ですから彼にはロシアと日本との間の貿易につながるビジネスを追っかけて欲しいと思っており、実際、彼も自分のロシア人脈を駆使していろいろとチャレンジしてくれています。

 

一方で最近では、ラブポップカードというアメリカ生まれのポップアップカードの国内での販促活動に積極的に取り組んでくれています。E-カードなどペーパーレスの風潮の反動か、アメリカではこのポップアップカードが年間100万枚も購入され大ヒット商品となっていますが、日本ではまだまだ知名度が低く販売チャネルも乏しい状況です。

そんな中で、A君は独自に見栄えの良いカタログを制作し、自主的に営業活動を行い、着実に販路を広げてくれています。

 

仕事の好き嫌いや、気分屋のところはありますが、やる気になった時の集中力やクリエイティビティはしっかりしています。

 

このA君と共に、事業家M氏の会社に外国人材を紹介していく話を次回お伝えしたいと思います。

 

続く