覗き込む小さな鏡の前で、紅をとった薬指がそっと触れた瞬間に染まる唇。ハッとするほどの色っぽいしぐさ・・・。

 昔は、女性が化粧のさいにこの指で紅を溶いたり、つけるのにつかわれていた。

 

 この指が、五本の指で最も使われることが少なく、そのため、汚れも少ないことや、力の入れにくい指でもあるため、ソフトな感覚で紅をつけることができることなどが紅をさす指として「紅さし指」とよばれる所以だとか・・・粋ですね。

 

 

 ベニバナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、この口紅の原料は「ベニバナ」で、ベニバナから分離した色素の溶液を、紅が退色しないようにハマグリなどの大きな二枚貝や蓋が付いた陶器の椀や猪口(伏せておけば光が入らないため)に何度も塗り重ね乾燥させた状態で販売されている。

 

 

 

 ※ 純度の高い赤い色素故に赤い光を吸収してしまい、反対色である緑色の輝きを放つため、乾燥した状態では玉虫色に見えるが、水を含ませると赤色になる。

 

 

 

 江戸時代、上質のベニバナを用いた口紅は非常に高価で『金一匁(きんいちもんめ)、紅一匁』という言葉通り、同じ重さの金に匹敵する価値があるともいわれた。なお、紅が無くなった容器は再び紅を買うとき店にもっていけば、それに塗ってもらうことができたようだ。

 

 ※ ベニバナは現在でも食品の着色料として使われいるが体に悪影響がなく、市販の口紅に使われる化学染料などと違って肌に負担がないといわれる。

 

 薬指で口紅をつける習慣がなくなってしまった現在、『紅さし指』は死語になった感があって惜しまれる。

 

 

 

 

 

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