大和撫子は控えめで清楚な佇まい。いかにも日本的は風情を漂わせていて、古くは万葉の時代から人々に愛されてきた花。
なでしこがその花にもが朝な朝な
手に取り持ちて恋ひぬ日無けむ
大伴家持 巻3-408
なでしこが そのはなにもが あさなさな
てにとりもちて こひぬひなけむ
【歌意】
あなたが撫子の花であったらいいのになあ・・・毎朝、毎朝手に取って愛撫しない日はないのに・・・
家持が、のちに正妻にした大伴坂上大嬢に贈った歌。
カワラナデシコ
日本に自生する代表的なナデシコでナデシコ、ヤマトナデシコとも呼ばれる。カワラ(河原)
と付くが、河原だけでなく山、川、野、浜、どこにでも咲く多年草。
ヤマトナデシコと呼ばれる河原なでしこは花の先が細かく繊細だ。
「撫子」の名前は本種が由来。ふるくから 人々に愛されてきた花。
撫子、石竹、なでしこ、そしてナデシコ、どのように書いても何度読んでみても、日本人好みの可愛らしい名前だ。その名前のせいだろうか、ナデシコの花はよく女性、それも日本的な女性にたとえられる。
中国では早くからセキチクが園芸化され、平安時代の日本に渡来した。
枕草子 第六十四段では、
「草の花は、撫子。唐のはさらなり、大和のもいとめでたし」
草の花は、なでしこ。唐なでしこは言うまでもない。大和のなでしこも、趣きがあってとてもすばらしい。
と書かれている。この頃には中国から「石竹」と呼ばれる日本のものより花弁がやや丸っこく、色も華やかで、どちらかと云えば可愛らしさが際立つナデシコが渡来していたようだ。
そんなナデシコを撮ってみた。
全国の山、川、野、浜 どこにでも咲く優しい撫子の類を、庶民の女人になぞらえて喜びとしたのは故無き事ではない。
秋の七種にも登場し、ひときわ女性らしい姿で男心をくすぐるのが撫子の花だ。
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