青紫色のリンドウが咲いている。子供のころは池の堤や草地でよく見かけたものだが、最近はそうした自生するリンドウを観る機会が少なくなった。アキノキリンソウと共にリンドウも姿を見せなくなっていくようだ。

 

 

 

 

 

 

 リンドウ

 リンドウ科リンドウ属の多年草。本州、四国、九州に自生する。日本固有種。花冠の内側に斑点がある。

最近目にするリンドウは、逞しい栽培種がほとんど。深い藍紫の山リンドウに会うことが少なくなった。園芸植物としてよく売られているのは、別種のエドリンドウの栽培品種のことが多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンドウは古くから日本人に親しまれてきた秋の花だと思えるのだが、奈良時代には人気がなかったのか、山上憶良の選んだ「秋の七種」には入っていない。

 

 平安時代になってようやく、清少納言の 枕草子 に登場する。

 

  龍膽は、枝ざしなどともむつかしけれど、こと花どもの、みな霜枯れたるに、いとはなやかなる色あひにてさし出でたる、いとをかし。

      (日本古典文学大系、枕草子第67段「草の花は」より抜粋)

 

 リンドウは枝ぶりは良くないが、他の花がみな霜枯れしてしまう頃に華やかな色彩で咲きだすのが、実に趣がある。

 

 色彩豊かな夏の花たちが消え去るころになって青紫色のリンドウが姿をみせる。リンドウには夏の暑さを吹き飛ばす・・・一陣の爽やかな秋風のような心地よさを感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 それにしても、青紫色の美しい花なのに、ものものしい漢字「龍膽(竜胆)」を書くものだ。

 

 竜胆の漢字の由来は・・・

 竜胆の根は薬用となり、苦味健胃剤として広く使用されてきた。この根が胆汁のようにとてつもなく苦く、その苦味が特別強いので、竜の字を冠して「竜胆」と名付けられたという。

 

 竜胆と書き、そのまま音読みして「リュウタン」と名付けられた。・・・・が、いつのまにか変化して「リンドウ」になったといわれている。

 

 「良薬口に苦し」というが・・・苦しい思いも心にはよい薬になるかもしれない。

 苦しい思いの後にはきっと、竜胆の花のような美しい花が咲くことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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