『止まった時間を動かす』
そのワードが大きな核になろうとしながら、私の動きを封じていた。
強い使命だけで突き進めるほど、確固たる思いは消え、自分の中の正義や軸となる部分が寄せては返す波にのまれ、混沌としていた。
その中でさえ、言葉を紡ごうとするのは、その先に答えがあると確信しているからかもしれない。
それは不確かで、壊れそうな自分そのものかもしれない。
不安や恐れが全ての行動を、封じる。時に声さえ、奪う。
シャーマンとして、降りてくる事を拒んだのは自分。
シャーマンである以前に、私は感情ある人間だ。
娘の死を防げず、助けることも出来ず、何がシャーマンだ。
神はいないのかと、否定した。
都合が良く、心地よい言葉を望んだ自分が、神の言葉として降ろしていたのではないかと、欺瞞(ぎまん)で心が潰れそうになった。
全てを否定しなければ、娘の死を受け入れられなかった。
生きていく為に、苦しみも喜びも感じない心を欲した。
感情がなくなる様にと。
娘がいないのに、喜びを感じていいのだろうかと追い詰めた。
使命や理想で誰かの役に立つことよりも、人として生き、普通に暮らす生き方を望んだ。
1年という時間は、多くの出来事を通じて自分の底を見せられた。
人である以上、どれほどあさましく、我欲に支配され、どうにもならない自分。
目を背けていた部分もさらけ出された。
まだ足りないと、これでもかと吹き出す感情に振り回されもした。
這い上がっては、落とされる繰り返しに、やっと受け入れる準備が出来た。
そして今、ここに立つ。
もし願いが叶うなら、平和だった10年前に戻りたい。
もし叶うなら、10年先の乗り越えた自分になりたい。
10年後の自分なら、今の自分にどう声をかけるだろうか。
今、このピンチを乗り越える為、手段を選んでいる場合でないのなら、乗り越える為に干渉する。
是宮の夢という形で、3年前から10年後の私と名乗る声だけが、干渉する。
今、目の前の出来事は、全て繋がっている。点と点の様でいて、全ては一本の物語。
何千年という年月が過ぎたとしても、変わらない想いを護るため、再び戻ります。
諏訪野美琴、わけあってシャーマンはじめました。