2007年8月2日(木)
8月2日の産経新聞夕刊に取材された当店の記事を大きく掲載していただきました!!
(紙面の約半分!!)
「3都まるかじり」特集です
当店スタッフもかなり写っていますよ


http://www.sankei.co.jp/
http://sankei-kansai.weblogs.jp/pickup/2007/08/post_cbd2.html

2007-08-02

【3都まるかじり】西脇畳敷物店 - 京都市上京区

 

攻めの姿勢で畳の魅力発信

 フローリングの部屋が増え、代わりに畳部屋が姿を消す現代だが、京都は寺院が数多くあることもあって今でも畳の需要は多い。「京たたみ」は京都府の伝統工芸品に認定され、それを支える畳職人の技術は全国的にも高い。

 京都市上京区の昔ながらの商店街の一角に店舗を構える「西脇畳敷物店」は、明治2年創業の老舗。店内では職人たちが手際よく針と糸を操り、畳を仕立てていく。一見どこにでもある普通の畳屋だが、世界にニュースを配信するアメリカのAP通信も取材に来たという。

 その理由は? 店内を見回すとすぐに分かった。丸や多角形の畳はもちろん、浮くかどうかには疑問符が付く畳サーフボードなど、ユニークな畳製品が並んでいた。

 出迎えてくれた同店の4代目、西脇方彦さん(64)と、長男で「タタミアドバイザー」を自称する一博さん(40)の姿もどこかおかしい。方彦さんの首もとを飾るネクタイはゴザ、一博さんが抱えるギターもゴザが張られている。

 2階の和室は親子の作品の“ショールーム”。薄暗い部屋に足を踏み入れると、センサーが感知し床の間の畳が緑色に光り、大文字など「五山送り火」の山々が浮かび上がった。畳の中に蛍光灯を埋め込んだ自信作。「うちは畳屋でして、電気配線に苦労しました」と一博さんは話した。

 畳をめくると、下から横30センチ、縦40センチほどの小さな畳を81枚敷き詰めた格子模様が現れた。別に持ってきた箱の中には、畳で作った将棋の駒。一博さんは「(部屋全体が)将棋盤になるんです」と教えてくれた。

 「部屋の天井を畳で覆いたい」「畳に水路を造って、金魚を泳がせたい」と真剣な表情で話し合う西脇親子。その傍らで、方彦さんの妻、香代子さん(64)は「こういうことをやり出したのは、20年くらい前から。もう慣れました」と笑う。

 ちなみに、これらの商品は基本的に非売品。西脇親子が遊びで作っているようにも見えるが、畳の魅力を伝える意味が込められている。その背景には、畳の需要が減り続けていることへの危機感があるという。

 板張りの床と違い、畳は古くなれば張り替える必要があり、経済的とはいいがたい。かつては保温性の良さなどで畳に利点もあったが、床暖房の発達で優位性を保てなくなった。一博さんは「畳には地味なイメージがある。これは私たちの宣伝不足もある。柔軟なデザインの畳ができるということを知ってもらうことで、畳の良さに注目してほしい」と語る。

 畳は四角形ばかりではない。茶室などでは、縁がカーブを描く畳が求められることがある。カーブを美しく作るには根気と高い技術が必要だが、特殊な形状の畳の注文は少なく、大量生産しても売れない畳をすすんで作る職人は少ない。細長い楕円(だえん)形をした「畳サーフボード」などの製品には、「京たたみ」が持つ高い技術を継承する意味合いも込められている。

 最近はビニールなどで作られた畳の香りがしないものや、農薬が過剰に散布されたワラで作った海外製など、安価だが粗悪な「畳らしき」製品が市場に出回っている。

 「畳は傷むけど、代え難い魅力がある。感性がごまかされ、本物の値打ちが分かる人が減っているのかもしれない」と一博さん。方彦さんも「経済的なものばかりを優先していったら、22世紀には本当の畳がなくなっているかもしれない。『畳らしき』製品で敷き詰められた茶室をどう思いますか」。

 日本の伝統建築に彩りを、さりげなく添える畳。イ草のにおいが漂う店内で交わされる西脇親子の会話からは、畳が持つ可能性と和文化を支える使命感が伝わってきた。(渡部圭介)

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西脇畳敷物店

 京都市上京区仲之町493。畳やカーペットなどの敷物の製造のほか、ふすまの張り替えなども行う。「ジクソーパズル畳」や「光る畳」など、予算と希望に合わせたユニークな畳をオーダーメードで製作。畳製品は敷物に限らず、ゴザを使ったふすまや筆箱といった小物まで幅広く注文に応じている。店内を見学することも可能。京都府知事から「京の老舗」の表彰を受けた。日曜・祝日は定休。TEL075・441・5525。