西新宿歯科クリニック 院長の武末です
田舎の方に行くと、野菜などがよく無人販売されている光景を目にします。都会から訪れた人が
もれなく思う疑問・・・・
ちゃんとみんなは野菜と引き換えにお金をおいていくのだろうか?
そのお金は盗まれはしないだろうか?
私の今までのブログの記事の傾向などから、お付き合いの長い読者の方は武末はこんな分野に
興味を持ってるのだろうと推測をされてると思います。そしてその傾向はおおよそあたってる場合が
多いですね。
そんな私の最近読んだ本でツボに入ったのがこれ
- ヤバい経済学 [増補改訂版]/スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー
- ¥2,100
- Amazon.co.jp
最初の無人販売における我々の疑問に対して、母数の多い事例とそこから見える傾向から
人間の犯すインチキをしっかりと経済学の観点から解説してる、愉快な本です。
古典派経済学の始祖 アダム・スミスが初めて世に出した著作「道徳感情論」の主題は
人間に生まれつき備わった正直さだった。
人間の本性には明らかにいくつかの原則があり、その原則ゆえに、人は他人の幸福に関心を寄せ
そうした他人の幸せから自分が得るものと言えばそれを見て楽しむ以外に何もない場合でさえ
菜人の幸せを自分の幸せのように感じるのである
と述べています。
また「ギュゲスの指輪」という話があり、この話の出どころはプラトンの著書「国家」からで、
ソクラテスの教えに対してグラウコンという弟子が語ったものなのですがこんな話です。
ソクラテスはアダム・スミスと同じように、人は強制されなくても一般的に善良なものだと主張しました。
一方、グラウコンは違う考えを持っていて、ギュゲスという名の羊飼いの話をしたのです。
ギュゲスは偶然秘密の洞窟に入り、そこで指輪をはめた死体に出くわしました。そしてギュゲスは
その死体から指輪をはずし、自分の指にはめてみると彼の姿は消え、人から見えなくなったのです。
自分の行動が人に見つからないのでギュゲスは女王を誘惑したり、王を殺したりひどい事を
するようになった。
そんな話ですが、この話も人の道徳的な疑問を突き付けてます。
自分のすることが他人に見られる心配がない時、人は罪の誘惑に勝てるか?
まさに野菜の無人販売と同じ問題です。
グラウコンにとっては答えはNO!
私は先日のブログ「私が歯科医師に求める要件」 でも書きましたが、そこで誰も見てないからと誘惑に
負ける人間は歯医者になってはならないと思ってます。そして多くの人がそうであると信じてもいます。
ソクラテスやスミスと同じように。
そしてこの本のある長期的な無人販売から得られた結論によると、条件によってその数字は
多少前後しますが、少なくとも87%の人はちゃんとお金を払うそうです。
これと少し似たような話で落し物についてのデータもちょっとご紹介。
昨年、全国の警察に届けられた落し物は1733万点あり、前年よりも36%増えたそうですが、その中で
現金はなんと141億円が拾得され、97億円が落とし主に返ったそうです。
本来は100%戻るのが理想的だと思いますが、落とした財布はかなりの確率で届けられているという
のも事実なのです。
その数字をどうとらえるかは人それぞれでしょうが、面白い数字ですね。