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(9〜12月まで。月2回の4ヶ月

中年のぼやきを書かせていただきました)



その😳

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今回は第6回《歯について》



(こちらは週1回、毎週金曜公開)

短いのでサクッとどうぞ😊↓


人生100年時代に対して、歯の寿命は50~65年らしい。私は49歳。「え?早かったら、あと1年?」と、口内の小さな住人達が心配になる。

 


幼い頃。よく虫歯になり歯医者に通った。麻酔注射や治療の機械音に泣く私に、当時の歯科医師が「想像してごらん。歯が敵に攻撃されてケガをしているんだ。だから治療して銀歯っていう最強の鎧をつけるんだ。無敵だろう?」と。地球の悪と戦う『銀歯ロボット戦士』、そんな気持ちにさせてくれた。その割に大好きなキャラメル一粒で鎧は身ぐるみ剝がされた。

 


小学生の頃。水泳部だった私はプールに飛び込んで、入水角度を誤り前歯を折った。

歯科医師が「歯で済んで良かった。でも歯一本亡くなったんだよ」と自分の大きな手のひらに『亡』と漢字を書いた。母が「自分の命も歯の命もなーんもわかってない!マヌケな顔しない!ちゃんと考えなさい!」と。歯抜けなだけで精一杯の真顔だった。差し歯を入れてくれた。子供時代にお世話になったこの先生のおかげで、私は歯の心を考えた。

 


大人になり東京に出てSM(キャラ)になった。毎日ムチで誰かしらに「歯を食いしばれ!」とお仕置きし、私のほうが緊張と力みで歯を食いしばった。その圧で奥歯にヒビが入った。

新たな歯科医師が「嚙み合わせの問題もあるので、矯正もひとつの手ですよ」と。その時は処置のみに留めてもらった。10年後、ある日突然割れた。こんなになるまで、ごめんと思った。

 


40過ぎて矯正した。歯の裏側に入れたワイヤに、食べ物のカスがぶら下がり、陰干ししているみたいになった。最初は痛くて上手く発音できず、酔っぱらって呂律が回っていない人みたいにもなった。整うまでに2年を要した。

 


そして今。小さな住人達よ、居心地はどう?元気でいられそう?1本も脱落することなく、こんな私と最後まで一緒に生きてよと思う。