台風で

実家に戻ったら。

「ヌォォォォォ。。。。ヌォォォォォー。。。。」と言う力んだ声が聞こえてきて。

男か女かもわからず。

荒々しい雨音とまじって薄気味悪く。

怖くて。

どっから聞こえてくるんだろうと恐る恐る音のする方に行くと。

暴風の中、庭で必死にくすの木を支えてるお母さんがいて。。。。。。



風で斜めに傾いでるくすの木を、Tシャツに半パンのお母さんが両手をつっぱりながら、

「ヌォォォー。。」と。

とっさに私、「お母さん！？危ないよ！」

母「すみ！いい所へ！」

私「？」

母「傘！持ってきて！濡れちゃうから！」

。。。。。もう、濡れてないところがないくらいズブ濡れなのに。。。。

。。。。ズブ濡れババアだ。。。。

私「意味ないでしょ！危ないって！」

母「はああああ！！？」と。

。。。。。。びっくりするくらいの形相で逆切れされた。。。。

剣幕におされ、傘を持っていくと。

母「バカ！！違う！その傘じゃない！ビニールの！１００円の！壊れてもいいやつでしょうが！」

。。。。。バカに。

。。。。。バカと言われた。

望みどおり、100円のビニール傘を差し出すと。

お母さんは、必死で左手でくすの木を支えて、右手で傘をさした瞬間に、バサッと傘が反り返った。

。。。。バカになった傘をバカ顔のお母さんが呆然と、さしていた。



その後、お母さんが、納得いくように、軽く木を補強して。

飛んでくる枝や、ゴミにあたりながらの作業で、すり傷だらけになった。



台風が去って。

くすの木は、斜めのまま無事っちゃ、無事でした。。

お母さんは、自分が守ったと誇らしげでした。

私「あの木、そんなに守るほど思い入れがあるの？」

母「。。。。そうでもないけど。。。」

私「。。。。え。。？。。」

母「人生にはね、ふんばらなきゃいけない時が、必ず何回かはあるものなの。」

。。。。。。１回、確実に間違えてるよ。。。

納得いかない顔をしてる私に、自身満々で。

母「お母さんはね！我が子を守る思いで、楠木を守ったの！」

。。。。。。私。

すり傷だらけだけど。。。。