おはようございます。
西尾で読書会。代表の宮子京(みやこ けい)です。
そろそろ夏に向かう中でエアコンを使用することも考えて、エアコンの掃除をしようと思います。
さて、今回の記事でご紹介いたします一冊は、
あさのあつこ『I Love Letter アイラブレター』文春文庫、2019年
という作品です。
この作品は、野球がテーマの小説である『バッテリー』を著したあさのあつこ氏が、2019年に出版した本です。
主人公の男の子は高校生活中に何かに疲れた「(元)引きこもり」の少年です。
親戚のおばさんに当たる続柄で「むぅちゃん」という愛称で呼ばれる女性が代表を務める文通の会社に雇われる主人公の少年。
涙あり、笑いあり、時に推理もする「むぅちゃん」と主人公。
なんとなく題名が気になって買った一冊だったのですが、この本に大当たりしました。
まずは、主人公が「(元)引きこもり状態の少年」で高校を中退して就職というところで、私自身の今までの姿に重なりました。
私も、高校時代に一時的に引きこもり状態になり、高校を中退しました。
私自身の引きこもり状態からの回復過程を思い出した時に、親のポジションでも無いけど、遠からず近からずな微妙な距離感の女性に陰で誉められていることを知った時に、
「もう一回、家から外に出てみよう」
と思えたのでした。
だんだんと社会に再び漕ぎ出していく過程が淡々と描かれているところが、元引きこもり、高校中退という節目に伴うマイナスなイメージを根こそぎ払拭してくれています。
そういう意味で、「この本は不特定多数の読者に向けて書かれているものだけど、私にとっては特別な一冊である」と思いました。
どのように特別な一冊なのか、より詳しく書かせていただきます。
この本の中の世界は、手紙のやり取りをする文通の会社の業務内容も細かに設定がなされていて、誠に素晴らしいのです。
作品の中に登場する会社は、
「もしも、現実世界にこういう業務内容の会社が存在したら、そこに就職したいな」
と思える会社でした。そして、私自身文通が大好きで、マイペースな自分自身に合った仕事を世の中に創り出したいと思っているので、
「こういう業務内容の会社が世の中に少ないのなら、私が創ればいい」
とも思いました。
とはいえども、綿密に練られた構成でこの『I Love Letterアイラブレター』という文学作品が存在しているということは、
実際にこういった業態の会社が、あさのあつこ氏の手によってこの世の中に半分は生まれ落ちているわけです。
「文学にインスパイアされた会社を起こす」というのも面白そうだなと思いつつ、ワクワク感満載で、本のページを繰る手が止まりませんでした。
それだけ、魅力的な世界観が描き出されているわけです。
この物語の終わり方も、ものすごい感動的な仕舞い方で、
「さすが、あさのあつこ氏だ!」
そして、手紙のやり取りの温かさや重要さを思い出させてくれる温もりのある一冊でした。
この記事が、あさのあつこ氏のファンである方々をはじめとして、引きこもり状態の時の人間の心理に興味のある方々の手に届きますように。
西尾で読書会。が、皆様のより良い読書生活のきっかけを提供できたら、僥倖です。
それでは、また次回!