おはようございます。
西尾で読書会。の宮子京(みやこ けい)です。
3月にマスクの着用義務が解禁になって、少し息がしやすくなりました。
コロナ禍の状況はよくなりましたが、それでもまだまだ油断が許されないのは事実です。
マスク代がまだまだ嵩みそうですが、周囲の方々の状況を見つつ、マスク生活の今後を考えていきたいと思います。
さて、今回の記事でご紹介するの一冊は、
小熊英二『基礎からわかる 論文の書き方』、講談社現代新書、2022年
です。
一言で言い表すならば、「この充実の内容でこの値段はウルトラ級に安すぎる」と思えるくらい驚かされる本です。
さて、現在院生である方々を除けば、論文というと、一番最後に書いた論文が大学の卒論という方がいらっしゃるかもしれません。
この本は、大学の学科教育の専門分化が著しく進んでいることを鑑みて、
論文の書き方の本が「すでに専門を決めている大学院生向けに、特定の学問でキャリアを積んだ学者が書いている本が多い(448頁より引用)」と分析し、
また「この2つの間を繋ぐ本が求められているはずだというのが私の考え(同じページから引用)」という原点を持った一冊です。
皆様は、最後に論文を書いたときや、卒業論文を書いた時の感覚としては、書きやすかったですか?
それとも書きにくかったですか?
この本を読むと、論文の「書きやすい」と「書きにくい」の原因がよくわかります。
実は、私自身、卒業論文が必修ではない学部を卒業したので、卒論は書いておりません。
したがって、卒論に関する知識がすっぽりと抜け落ちています。
私は、これから、学費を貯めて、もう一度大学に進学しようと考えております。
その時に困らないように、一度は書かずに通り過ぎてしまった卒業論文の知識を仕入れようと思い購入しました。
この本では、論文を書く上で必要な知識を全て網羅しつつ、
大学に進学したばかりの学部生が読んでも、これから大学に進む予定の高校生が読んでも大丈夫です。
著者自身が、本書の中において、自らの立ち位置を病院の「かかりつけ医」に準えて説明しているように、
この本を読んで基本的事項を押さえたのちに、各々の専門分野の論文の書き方の「お作法」を学べるようになっています。
実際に、学部生、修士課程に進んだ人、高校生、社会人を対象としており、幅広い読者層に対応できるような一冊となっております。
私が読んで思ったのは、「論文を書くことを細かく細かく分解するとこんなにもたくさんの工程があるのか」ということでした。
そして、「注」と「参考文献一覧」も充実しており、著者の広い見識が伺われる素晴らしい一冊です。
そして、論文を書くためのノウハウ本かと思いきや、ビジネス文書にも応用できるノウハウも惜しみなく公開されております。
さらに、論文は書いて終わりではなく、口頭発表(プレゼン)を行うことで完結するという側面もあります。
そのように考えたときに、口頭発表のコツなども書かれており、
書くための準備 → 書く途中の工程 → 書き終えてから行うこと(校正や口頭発表)
と一読すれば、全ての段階の基礎知識が身につきます。
そういった理由があって、私としては、一読して冒頭にも書いた「この充実の内容で、1300円➕税の価格は安過ぎる」という感想を持ちました。
最後になりましたが、論文を書くことはなくても、自分の仕事の分野の論文を読む機会があるという方もいらっしゃるかもしれません。
論文の性質を理解すると、今まで以上にサクサク早く読めるようになる可能性があります。
この本は、幅ひろいニーズに応え得る図太い軸が通っている一冊です。
私自身、この本を読んだことで、これまで漠然と読んでいた論文の構成などに対して目から鱗が落ちる思いがありました。
この記事が、これから大学で、あるいは仕事で論文を書き進める予定の人に届けば幸いです。
それでは、また次回!