歌舞伎で人気のある「勧進帳」
あらすじはこんなお話です。

兄頼朝との仲が悪くなった源義経は、
武蔵坊弁慶らわずかな家来とともに、
京都から平泉(岩手県)の
藤原氏のもとへと向かいます。

頼朝は平泉までの道すじに多くの関所を作らせ、
義経をとらえようとします。

加賀国の安宅の関所(石川県)は
特に厳しい関所でした。

一行と一緒に若い尼さんがいましたが、
自分がいるとことで主君の足手まといに
になってはいけないと思い、
海に岩身を投げてしまいます。

さて、この難関をどうやって突破するか??

義経一行は山伏に変装して
関所を通過しようとします。

ところが関所を守る富樫左衛門は、
義経たちが山伏に変装していると
いう情報を知っていたので、
一行を怪しんで通しません。

そこで弁慶は、何も書いていない巻物を
勧進帳と見せかけて読み上げます。

勧進帳とは、お寺に寄付を募る
お願いが書いてある巻物です。

この場面が舞台の見せ場の1つです。

主君の命がかかった場で、
練習も何もなしのぶっつけ本番

白紙をもったいぶって眺めながら
いかにも勧進帳であるかのように
勧進する品々をとうとうと読み上げる
弁慶の胆力は、

この弁慶の名演技によって
一行は関を通ることを許されます。

いったんは本物の山伏一行だと信じて
関を通した富樫ですが、

中に義経に似た者がいる、
と家来が訴えたため、呼び止めます。

万事休すか?と、さすがの弁慶も
思ったことでしょう。
さあ、どうする?

しかしここであきらめないのが弁慶の凄い所

瞬時に考えを巡らせ
変装がばれないようにするために、
弁慶がとった手段は、というと

なんと、持っていたつえで
主君の義経を激しく叩きます。

それを見た富樫は、
その弁慶の痛切な思いに共感して
関所を通すのでした。

ここが、また芝居の見せ場の一つで
冨樫と弁慶の丁々発止のやりとりは
息詰まるような心理戦です。

生きていると、たまにはこのような
人生で最大と言えるようなの危機に
直面することもあるかもしれません。

その時に、どう考え、どう行動するか?

弁慶の場合は、最大のピンチの時にも
決してあきらめることなく、
難関を突破する方法を見つけ出します。

あきらめずに何事もやり遂げることを
習慣としていた弁慶だからこそ
できたことでしょう。

私たちは、これほどの困難に
直面することは少ないですが、

日常の生活で、
細かなひとつひとつのことを
あきらめずにやり遂げようとすること
これをやり続けることで「やり抜く」ことが
あたりまえになってくれば

困難に直面しても動じない精神力も
身につく気がします。