江戸長久は僧侶として、大崎和絵と対決することになるのだが、心は痛んでいた。
これまでデラシネハイハイを無視し、次にはドクダミ庵にいたミジンコハイハイを相手にしなかった。
三人目の女装したソンガイハイハイは和絵の先方としてやってきたのであるが、妖術の力が足らなかった。
故に大崎城に辿り着いたのだが、江戸長久は心が痛んでいた。
「好き好んで妖怪になったはずはないのである」
「どうして般若経で極楽に送ってやれなかったのか」
心に動揺がある。
このままで、大崎和絵を倒しても妖術の城は残るのだろうか。そこには、はるかに多い小物の妖怪が住み着いているはずだ。
其れすらも暮らす場所を追いやってよいのだろうか。
三人のハイハイは、人間界を去ってから19年の時が流れていた。
20年で転生するというのに、何の努力もしていないのである。
手助けするのが僧侶の役目である。
滅ぼすことの意味を問い詰めていた。