黒染めの僧侶でありながら、江戸長久は心にも肉体的にも情熱にあふれていた。

だから、デラシネハイハイの洞窟にもいかず、ミジンコハイハイのドクダミ庵にもよらずに、過ごせてきた。

今度は大崎城を目前にして、ソンガイハイハイが女装して惑わせようとしているのを察した。湯に入ってくつろげとは、またいい加減な罠だと察知していた。

大方、汚いやり方で長久を狂わせようとしているのは理解できた。

だから、小便で出来た生ぬるい湯などに入るはずはない。

江戸な画筆の目には、大崎城しか目に入らない。

大崎城城主の大崎和絵と知り合いたいのである。

そうして、この幻影城をかき消していのである。

 

悪の権化としての一角を崩したいのであり、それはいずれでもよかった。

僧侶の身から抜け出て、探偵小説の主人公になっても良かった。

全てが美しい空のように輝いていること、これが目的であった。