たぬきのお母さんがミニテーブルに置いたのは竹の筒だった。カパッと蓋を外すと無言であつこの鼻先に突き出した。

「クサっ!何これ⁈」
思わず顔を背けて深く息をした。

「出来たてのドクダミのお茶。新茶ですよー」
「ドクダミってあの陰気なところに咲いている白い花の?」
「そうですよ。日に干してやっといい感じに仕上がったんで、お通じの気になるあつこさんにお届けしたくて…」
たぬきのお母さんは目を大きくして言った。

「どうやって飲むの?」
「ガラスかホーローのお鍋かしてください」
二人(一人と一匹?)の声はほとんど同時だった。
丁度おばあちゃんにもらった、お気に入りのガラスのお鍋がある。
二人(一人と一匹?)で台所に移動した。
たぬきのお母さんは背が足りないので椅子に乗った。
すると動けないのでここからはあつこに指示を出してあつこが動くことになった。

「まず水と茶葉を入れてガスコンロにかける。しばらくするとしゅわんしゅわんと湯気が上がるのはいいですが絶対に沸騰させないようにして!30分くらい煮詰めてくださいね」
「えー⁈30分も!」
「長いですよね。だから私は失礼しますので…おじゃましました。さようなら」
そう言うとたぬきのお母さんはクルリと器用に一回転をして床に降り、スタスタと玄関から帰ってしまった。