「畳とイス、どっちがいいかな?」

「じゃあ畳でお願いします」

あつこは抱っこしていたたぬきのお母さんをそっと和室に降ろした。
そして押入れから折り畳み式のローテーブルを出した。
それは昔、ドーナツショップのおまけでもらったもので、小さい子がおままごとをするのに丁度良いサイズだった。
カチャカチャと黒いコーティングをされた脚を立てる。
その前にお座布団を置くとたぬきのお母さんはちょこんと座った。

リアル信楽焼!その姿が微笑ましい。

大福帳やとっくりも持たせてみたい気になったが、振り払うように椿のお湯のみを取りに行った。

「はい、おまたせ」

「あー、よかった。ありがとうございます!次の椿のシーズンまで作れないものですから。貴重なもので。ではこれを」と
割烹着のポケットから何やらゴソゴソと取り出した。