PTAから案内のプリントが出されたり、朝会で校長先生がお話ししてくれた影響もあったのだろう。
中間休みや昼休みは、マイハサミを持った児童たちで図書室があふれかえった。
アニメの主人公の難しい髪形をねばり強く切りぬいた一年生の女の子。
あわよくば、作品をボランティアさんに作ってもらおうとする三年生の男子。
フェアの三日間、中間休み、昼休みと放課後も通い続けた六年生の女子。彼女は飾ってあるのと同じ難しいポップアップカードを完成させた。
お母さんの誕生日にプレゼントするのだそうだ。
このイベントの影響はすごくて
フェア終了の翌日からたくさんの本が貸し出し中になった。
切り紙や折り紙関係の本だけではない。
切り紙風のさし絵の入った読み物に、影絵の絵本。
自分の手で何かを作り出す楽しさを知った子も多かったようだ。
あやとりに手作りおもちゃ、家にある材料を使ってできる実験が紹介されている本、リサイクル関連のものまで。
図書室の本は減っても、寒々しい感じはしなかった。
本格的な秋になり、図書室も落ち着きを取りもどした。
けれど、今までよりも多くの児童が図書室にやって来るようになっていた。
その中に5人、いつもいる女の子たちがいた。この前の〝切り紙フェア〟での楽しさを忘れられなくて、〝紙クラブ〟なる活動を始めたのだ。
メンバーには、僕がひそかに思いをよせている、同じクラスの美加ちゃんもいる。
これは親しくなる絶好のチャンスだ。
ドキドキしながら、でもそうは見えないような顔で、一緒にできる活動を提案した。
「季節ごとにおすすめの本や絵本を紹介しているのですが、もしよければそのテーマに合った作品を作ってもらえませんか?今からだとやっぱりクリスマスがいいかな」
「クリスマス!」
みんなが笑顔でさけんでいた。
そこからの行動は早かった。
図書委員でこれぞクリスマスという本をピックアップした。
野菜がおもちゃに変身する切り絵絵本、『サンタのおまじない』
ちょっと難しかったけれど、クリスマスに関係する地名などについてくわしくわかる、『クリスマスものがたり』
だれでも一度は親に聞いたことのある質問が載っている、『サンタクロースってほんとにいるの?』など。
場所も限られているので、これくらいかな。
低い本だなの上に、家から持ってきた牛乳パックで作ったスタンドを置き、本を立てかける。
かざりもたくさんできた。
サンタクロースの顔の大きな切り紙。赤い台紙に白い髪が映える。
緑と黄緑の色紙でできた立体ツリー。ビーズがつり下げられ、金や銀のモールがアクセントになってとってもきれいだ。
どうやって作ったの?と思うほど、見るからに難しそうなたくさんの紙でできたバラの花。福山ローズという折り方らしい。
窓には白とアイボリーの色画用紙で作られた雪の結晶や、深い青の色画用紙を使った雪だるまの切り紙がたくさん貼られた。
なんて幻想的できれいなのだろう。
図書室だから当たり前なんだけれど、静かで落ち着くというか、幸せがただよっている感じだ。
それをながめていて、僕はもっとたくさんの人にこの様子を見てもらいたくなった。
優しい雰囲気にひたってもらいたい。
そういえば、12月には3日間、だれがどの時間に訪れてもいい自由参観の日がある。その期間、ここも開放してもらおう。