猛暑日が3日続き、軽い熱中症状態で

不覚にも夕方から横になって眠ってしまった。

ピチュピチュと雀の騒ぎ出す声で瞼が動き朝を迎えた。

時計は4時41分を表示していた。


洗濯物は当然取り込まれていない。
ほったらかされたままだ。

そうっと網戸を開けて洗濯物を取り入れる。

「おはよーございます」
あれ?

こんな時間でも女王さまだけしかいない。

数は少ないがもろに見える白い卵…

「あのう    やっぱり苦手なんですけど」
ついつい口に出てしまう。
だから私は京都人らしからぬ京都人と嘲笑されるのだと自嘲する。

(そう言われてもなぁ…)
困り顔で女王さまはいつも通り逆さまに張り付いたままこちらを見ている。

「あなた達には人間の未来の青写真があるそうですが?」

(……)

「いつも逆さ向きで頭に血が上りませんか?」

(……)

「やっぱり、お引っ越ししませんか?お引っ越ししましょうよ!お引っ越しして下さい‼︎」

お引っ越し願いを三段活用し正直な気持ちを伝えながら取り入れた。


その後朝ドラが終わってから午前8時30に今日の分を干しに上がったが、家来はやはりいない。女王さまだけだった。

朝に出された夫のスラックスを洗い忘れていたのに気付いたのはお昼前。

手洗いコースでの洗濯を終えて本日三度目の物干し場へ。

ついでに巣を見るといつも顔出す女王さまの姿も見当たらない。

卵もない。

完全なる空き家状態だ。



とっさに手に取ったのは布団叩き。

「ごめんね。お引っ越ししてくれてありがとう。ホントごめんね」

巣の根元をこそげ取るとカラカラの巣がカーポートの上にあっさりと飛び、庭の片隅に落ちて行った。