西日の美しさより暑苦しさが勝る


ある日の夕方

洗濯物を取り込もうと物干しのある

二階の西側の和室に上がった。

クスカサ…

コソン…

肌のソバ立つ音がした。

まだ明るいのにもしやGか?

こっちが勝手に夜のイメージを持って

いるが日の高いうちに出ない理由は奴

にはない。

恐る恐る音の主を探ってみれば

左側の障子と窓ガラスの狭間で行き場に困っ

ている一匹の蜂であった。

部屋に飛び込まれては困るので

手の先がギリギリ入るだけ障子を開け

窓を開けようとするが

鍵がかかっていた。

仕方なく今度は腕が入る広さにして

鍵を下ろした。

窓を目一杯開けても蜂は右側に移動し

自らを窮地に追い込んでいる。

「大丈夫だから、お外に飛んで」

話しかけても通じないか…

ラチがあかないので窓はそのままにして

障子をピタリと閉めて部屋を出た。

夜、眠る前の戸締りでは蜂は

確認できなかった。


二日後の夜、又しても音が聞こえた。

案の定、何処から来たのか蜂がいた。

今度は障子と窓ガラスの狭間ではなく

更に狭い、なぜそこに行ってしまった

のか謎でしかない窓ガラスと網戸の間

をウロウロしていた。

網戸を動かしても窓と枠の間に

とどまってしまう。

潰れはしないがどちら側に身を寄せる

か分からない。

隙間の距離が一番短くなるのではないか

と思われる、窓ガラス二枚と網戸の計

三枚を同じ位置で重ねた。

「早く出てね」

一声かける。

そして障子はぴっちり閉めて下へ降りた。

翌朝、目覚めと共に雨が降り出し

慌てて蜂のいた部屋の窓も締めに行った。

もう蜂はいなかった。