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家にDVDプレイヤーがない人が欲しくなるDVD&Blu-rayとは?
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今日は、「配信時代に『パッケージ』の価値をどう作るか?」というお話しです。
 
以前から、ご案内しておりましたが、明日、『映画 えんとつ町のプペル』のDVD&Blu-rayが発売となります。
 





早くから予約をとっていた人だと、もしかすると、今日のうちに自宅に届く人もいるかもしれません。
 
自宅で、『映画 えんとつ町のプペル』を楽しんでいただけるのは、作り手としても本当に嬉しい限りなのですが、その一方で、「DVD&Blu-ray化」の話をいただいた時に、まず最初に頭に浮かんだのは、「皆の家に、DVDとBlu-rayのプレイヤーって、あるんだっけ?」という疑問です。
 
ある人はあるし、車に乗っている人は、そこで観ることもあるでしょうが、
少なくとも僕の家にはないし、僕は車を持っていません。
 
つまり、僕みたいな人間にとっては「DVD&Blu-ray」は、あまりにも他人事なんですね。
 
で、全部本音で喋りますが、僕は、僕が欲しくないものをあまり売りたくはないんですね。
 
絵本にしたって、映画にしたって、ミュージカルにしたって、歌舞伎にしたって……世間のニーズなんて、本当にどうでもよくて、僕は僕がお客さんとして観たいものしか作りたくないんです。
 
そもそも世間のニーズを考えたら、「ゴミ人間」を主人公なんかにしません。
主人公は「イケメン」にします。
 
でも、僕(少なくとも今の僕は)、「イケメンと美女の恋物語」とか、本当に興味が持てないんです。
 
良し悪しの話をしているわけじゃないですよ。
「僕個人が作る分には、興味が持てない」という話です。
 
興味が持てなかったら、その制作には命を懸けられないじゃないですか?
 
そこが結構、大事なラインだと思っています。
 
たとえば、蜷川実花さんの映画には、イケメンも美女も出てきますが、それでも僕が彼女の作品が好きなのは、「ニーズありきで作ってない感」がプンプンするからだと思います。
 
全身全霊をかけて、「私、これが好き!」をやってて、「エグみ」や「膿」がたっぷり出ていて、その世界に出てくる登場人物達がたまたまイケメンと美女だったというだけの話で…だから好きなんだろうな、と思います。
 
「自分が好きで好きでたまらないものを作って、それをなんとか届ける」という仕事をしている人が好きで、自分もそうありたくて…そして、それは作品の中身だけじゃなくて、DVDやBlu-rayといった「パッケージ」でも同じです。
 
だから、今回、「DVD&Blu-ray化」の話をいただいた時に考えたのは、「僕が買いたくなるDVDやBlu-rayはどんなのだろう?」ということでした。
 
家にプレイヤーがなくて、そして、さすがに『映画 えんとつ町のプペル』のDVDを観る為だけにDVDプレイヤーを買う体力も気力も僕にはありません。
 
となってくると、「『家にはDVDプレイヤーがない』という今の条件のままで、欲しくなるDVDとは?」という問いになるわけですが、答えは「インテリア」でした。
 
「部屋に飾る用のDVD」ですね。
 
「中身は、いつかテレビ放送された時とか、またいつか映画館で再上映された時に観りゃいいや」という感じで割り切ってみたんです。
 
そんなこんなでスタッフさんに、かなり無理を言って、「観るDVDじゃなくて、飾るDVDなので、通常盤とは別で、飾り映えするように、LP版(アナログレコードサイズ)を作りましょう」と言って、半ば強引に作ってみました。
 


 
 
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「意味変」という選択肢は持っておくべき
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こういうの「商品そのものの役割を変えてしまうこと」を僕ら周りでは「意味変」と呼んでいますが、今回はDVD&Blu-rayを意味変して、「映像作品」としてではなく、「インテリア」として押し出してみたんです。
 
そうしたところ面白い結果が出まして、「映像作品」として売った『通常版』と、「インテリア」として売った『LP版(豪華版)』を比べてみたところ、『LP版』の方が圧倒的に予約が多かったんです。
 
もちろん「映像作品として楽しむことがメインだけど、どうせ買うなら、飾れるやつを」というニーズもあったと思うのですが、予約してくださった方のコメントを拾ったところ、「家にプレイヤーがないので、LP版を買いました」という人も少なくなくて、「意味変」が机上論ではなく、ちゃんと【結果】として表れていました。
 
僕らは、普段、作品や商品を届ける時には、当たり前のように「意味変」が選択肢に入っていますが、世の中には…たとえば「おにぎり」を販売している人の中で、「おにぎりって、『食べる』以外の機能って、あるっけ?」と考える人って、あまりいないと思います。
 
それって、すっごい多くのものを取りこぼしていると思うので、全てのサービス提供者さんは「意味変」癖ぐらいはつけておいた方がいいんじゃないかなぁと思います。
 
こんな話をすると、「マーケティングなんて、関係ない。大切なのは中身だろ!」と言われたりするのですが、ちなみに、この1週間でいうと『映画 えんとつ町のプペル』は、メキシコの『ロスカボス国際映画祭』と、カタール・ドーハの『アジャル映画祭』から御招待いただきました。
 
ご安心ください。
中身でもブッちぎっています。

 
 
 
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