僕、『CANDY』というスナックをやっているんです。
厳密に言うと、「株式会社スナック」という会社を立ち上げて、その会社が運営する『CANDY』というスナックを五反田の某所に作って、まるまる後輩にあげました。
運営も何もしておりません。
一応、「株主」という状態だと思います。
こちらは、『えんとつ町のプペル』に出てくるスナックです。
混乱を防ぐ為に、もう一つだけ言っておくと、この『CANDY』というスナックは今、全国にありますが、「名前&世界観貸し」みたいな状態で、それぞれの地域の、それぞれの会社が運営しております。
一応、反社が地方で『CANDY』を運営しちゃうと具合が悪いので、立ち上げの際には色々と取り決めがあるらしいですが、営業が始まってからは、「売り上げの○○%を納めてください」みたいな感じじゃありません。
たぶん、そこを無料にしちゃうのはキャラクタービジネス業界ではありえないことだと思うのですが、「そういったことをやってみたら、どうなるのかなぁ?」という実験です。
全国各地にありますので、是非、探して行ってみていただきたいのですが、今からお話しするのは、五反田の某所にある、いわゆる『CANDY本店』の話です。
五反田店は、僕の後輩がやっているので、ときどき気になったことがあれば「○○をやった方がいいんじゃない?」と提案させていただくんです。
そんなこんなで、1〜2年ぐらい前ですかね…
いつものようにスナック『CANDY』で、居合わせたお客さんと呑んでいたら、そのお客さんのうちの一人が、動画を撮りだしたんですね。
「残して、あとで個人的に観よう」と思ったのだと思います。
でも、撮られている側からすると、それが本当に個人的なもので収まるのかどうなのかの確信がとれない。
もしかしたら、まったく悪意なく、LINEで親友にだけ投げて、そこからSNSに流れる可能性もあるわけじゃないですか?
と考えると、SNSに流される前提で話さなきゃいけなくなる。
でも、それって、もはや「オフライン」の意味がなくないですか?
たとえば、今、世の中を息苦しくしている原因の一つに、「切り取りハラスメント」があるじゃないですか?
前後の文脈をまるで無視して、一部の単語だけを抜き取って、たとえば、僕がある先輩のエピソードを話して、その最後で「あの人、ほんと、バカなんだよ」と愛情しかない言葉でまとめても……エピソードをカットして、「あの人はバカ」という部分だけを切り取って、「キンコン西野、先輩芸人を痛烈批判!」となって、そして、そのニュースを鵜呑みにする人がたくさんいる。
こういった「文脈の無視」が横行してしまうと、当然、使える単語が減るわけだから、コミュニケーションが乏しくなるのは当然っちゃあ、当然で、コミュニケーションを買いに行っているような「スナック」で、それが起きるのって意味が分からないなぁと思って、スナック『CANDY』の五反田店は、スマホ禁止にしたんです。
銭湯みたいな感じです。
銭湯でいうところのロッカーで、
スナックでいうところの入り口で、
スマホが回収されてしまうんです。
普段、当たり前のように触っているものが触れなくなってしまって、発信したくてもできない。
もちろん、何か用事がある時は、店の外に出て、スマホを使えばいいのですが、店内では使えないんです。
こうしたことによってどうなったか?というと……
メチャクチャ居心地がよくなったんです。
「ここだけの話」が増えて、その日、その場に居合わせたお客さんとの距離がグッと縮まった。
僕自身、メチャクチャ行きやすい店になったんです。
で、面白いなぁと思うのが、『CANDY』って「えんとつ町の中にある店」という設定になっているので、内装とか、バッキバキに作り込んでいるんですね。
つまり、インスタ映えしまくるんです。
インスタ映えしまくるのに、スマホ禁止だから、インスタにアップできないんです。
だけども、「スマホが使えない」という満足度の方が、「インスタにアップして拡散する」ということよりも、拡散力があって、五反田店は集客に困っていない。
「間口を広げりゃいい」って問題じゃないんだなぁと思いました。
少し話を戻します。
先ほども申し上げましたが、スナック『CANDY』って「ここだけの話」ができるんですね。
これは、1〜2年前の段階で、すっごい大きな価値だなぁと思っていたのですが、ここにきて、さらにその価値が増していると感じでいます。
今はもう、コロナの影響で、皆のストレスが凄いじゃないですか。
国民総出で、何か潰せる対象を探して、潰しては、「次の潰し先」を探している。
誰も何も言えない状態になっていますよね。
でも、時代を前に進める時の交換条件として「摩擦」は絶対にあります。
YouTubeとかに残っているかな?
スマホが世に出てきた時の渋谷のギャルのインタビュー動画が面白いんですけども、スマホのことをボロカスに言っているんです(笑)
クラウドファンディングが世に出てきた時もそうですよね。
それでも、まだ、海外のサービスや製品だと、開発者の顔が出てこないから、ボヤけるのですが、「個人」の顔が見えてしまう日本人だとそうはいかない。
摩擦が大きすぎる。
たとえば、ちょっと前だと、マコなり社長が運営する会社が新しい学習サービスを始められた時に、「情報商材だ〜!」という理由で大炎上しましたが、中身を見てから批判したり、サービスを利用した人が、その感想として批判するのであれば、それはあるべきだと思うのですが、「実際に白か黒かはどっちでもよくて、ここを黒にして叩くと再生回数が回る」という理由で叩いていた。
それが許されてしまうと、もう新しいことなんてできないです。
昔の価値観をアップデートしないまま、皆で一緒に老いていくしかなくなる。
でも、この世界を変えるのって、簡単じゃないと思うんです。
やっぱり今は、新しいことを始めるよりも、新しいことを始めた人を叩く方が取り分があるから。
人を叩くと、お金になってしまう。
「clubhouseで喋った内容は口外禁止」と案内を出しているのに、記事にしてしまうライターがいたじゃないですか?
そうなると、 せっかく友達との会話のように楽しめたClubhouseでの会話も「余所行き」のものになってしまう。
あの一件は、かなりclubhouseを失速させたと思います。
芸能人がclubhouseに参加する楽しみが一気に減った。
さて。
こうなってくると、キチンと話を聞いてくれて、内容を咀嚼した上で「違うものは違う」と言ってくれる人が集まって、そしてそこでの議論が外に漏れない空間というのは大きな価値があるなぁと思っています。
オンラインサロンがその一つですし、スナック『CANDY』のようなスマホ禁止の店もそう。
幻冬社の箕輪さんが最近「サウナ」を激推ししていますが、それも本質的だなぁと思います。
これは数年前から言ってきたことですが、コロナによって、コロナが生んだストレスによって、より加速した感じがしています。
「ここだけの話」ができる空間の覇権を誰がとるか?という競争になってきそうですね。
スマホ没収のキャンプ場とかは普通にあると思います。
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