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出版業界って、なんか難しい言葉が多いですよね?


本の一番最後にある作者のプロフィールやら出版社の情報やら発行年月日なんかが書かれている部分のことを「奥付(おくづけ)」と呼ぶのですが、奥付には必ず「2020年9月15日 第1刷発行」とか書かれています。


…「印刷」の「刷」と書いて、「ズリ」と読むらしいのですが、それもちょっとややこしい。




さらにややこしいのが、「出版」の「版(はん)」という字が用いられて、「2020年 9月15日 第5版 第3刷発行」とか書いてあったりもするんです。


もうパニックですよね。




そういえば「重版」と「増刷」の違いって、よく分からなくないですか? 



これ、どうやら今の時代の感覚で考えちゃうから少しややこしくなっているみたいで……



昔は印刷物を作ろうと思ったら、それこそ「版画」のノリで、あの『大元』を作らなきゃいけなかったらしいんですよ。


木か何かをガリガリと削って、それで、そこにインクを付けて、ハンコを押すみたいにペッタンペッタンするイメージです。


その大元の名前が「版」です。




この「版」を使って、「とりあえず100冊刷ろう!」となって、刷られた印刷物に「第一版 第1刷」という名前が付く。


そこで、100冊が売れちゃって、「追加で、もう100冊刷ろう!」となって、刷られた印刷物に「第一版 第2刷」という名前が付く。



どうやら「刷」というのは、刷られた回数のことで、その回数が増えることを「増刷」と呼ぶみたいです。



そして、大元となっている「版」そのものに誤字が見つかったり、ちょっと内容を修正したくなったりして、「版を変更しようかしら」と思って、もう一回、ゼロから作り直された「版」によって、刷られた最初の印刷物に「第二版 第1刷」という名前が付く。


 

この大元の「版」が、作り直されることを「重版」と呼ぶらしいです。


が、今はもう全部デジタルなので、少し誤字が見つかっても、チャチャと手直しするだけで、「ゼロから木を削って…」みたいな作業がないんですね。

わざわざ「版」を作り直さないんです。

 


一部、教科書とか辞書といった「時代によって情報がアップデートされるもの」があるので、「アップデートしたよ〜」ということを明確にする為に「版」という言葉を使ったりもしますが、今は「重版」も「増刷」も、ほぼ同じ意味で使われています。

 

 

「それは重版じゃない! 増刷だ!」と重箱の隅を突いてくる怖い人もいるかもしれませんが、「そこはもう、いいじゃん」みたいなノリになってます。


…このことを踏まえた上で話を進めます。




本というのは、やっぱり「発行部数○万部!」みたいなところに目がいって、多くの人は、そこで「売れているか、売れていないか?」を判断されると思うのですが……出版業界の人が本を見るときは、必ず「奥付」を見て、「この本は今、何刷か?」そして「最後に刷られたのは、いつか?」という部分を見るんです(笑)


その部分こそが、「今、売れている本かどうか?」を判断できる唯一の材料なので。


  

「発行部数50万部!」でも、2年前の日付で「2刷」とかで止まっていたら、「追加注文が入ってない」ということですから、「たくさん刷ったけど、売れなかっんだな」と判断できる。


ここが面白いですよね。


 


で、ここからは僕の話になるのですが、生々しい話、僕自身、「発行部数」はそれほど重要視していないんです。



そりゃ、「初版発行部数」がある程度ないと、「買いたくても買えない」というクレームが作者の元に山ほど届くので、そこだけは何とかしたいですが…ただ、宣伝文句となるような「発行部数」にはそこまで興味がない。



じゃあ、僕は「どこを重要視しているか?」というと、「増刷の回数」です。



ここをコンスタントに重ね続けられる本が、いわゆる「ロングセラー」と呼ばれる本で、「自分がお腹を痛めて産んだ本を、どうにかして『増刷され続ける状態』に持っていく」というところに力を注いでいます。

ここが腕の見せ所ですね。




くれぐれも、僕は「売れそうな本」なんて作らないですよ。

作りたい本を作って、その後、届け方を考える。そのへんについては、現在、連載中のコラム『ゴミ人間』でご確認ください。




【キンコン西野新連載『ゴミ人間』】

https://thetv.jp/news/detail/243343/amp/?__twitter_impression=true






昨日、幻冬社の袖山さんから「西野さん、『えんとつ町のプペル』の増刷が決定しました。今回で50刷です」という言葉をいただきまして、「ああ、ようやく、50だぁ。。」と、なかなかこみ上げてくる者がありました。



部数でいうと、47万部とか、それぐらいです。




『えんとつ町のプペル』を出すときに、袖山さんやファンの皆様に「100万部売る」と言ったので、もちろん、そこは必ずクリアします。



ただ、個人的には「100万部」はそこまで高いハードルだとは思っていなくて、お客さんからも「西野だったら、それぐらいはやるでしょ」と思われていると思うので、そこはクリアした上で、それより何より、「刷」の回数にこだわりたいです。


 



やっぱり、5年後も10年後も愛される作品であって欲しいので、その為のサポートは全力でやらせていただく次第でございます。



最近は僕個人のことなんて本当にでどうでもよくなっちゃって、やっぱり僕らはチームで動いていますし、後輩も育ってますし、作品に紐づいた事業を展開しているサロンメンバーさんもたくさんいらっしゃって、そこには生活がある。



なので、作品を一過性のものにしてはいけないので、長く愛され続ける仕組みが必要で、ここの打ち手に関しては、今日のサロンの記事で書かせてもらいます。


興味がある方は覗いてみてください。



今日は【「重版」と「増刷」の違い】について、お話しさせていただきました。


 



 


西野亮廣(キングコング)






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