先日、「ゴッドタン」の収録がありました。
まだ、ソーシャルディスタンスを保った内容となるので、いつものように「劇団ひとり」さんとの濃厚接触の向こう側のような争いはなく、「コンビ愛確かめ選手権」というトークメインの企画です。
「また、コロナが明けたら尻ベーターをしようね」とか言いつつ(♯ふざけるな)、今回は、落ち着いた内容だったのですが、それはそれで面白くで、ちょっとした思い出話になったりしました。
というのも、昔(僕らがデビュー1年目ぐらいの時に)、フジテレビの深夜で「本能のハイキック」というハチャメチャなバラエティー番組があって、キングコングも、おぎやはぎさんも、劇団ひとりさんも、その番組のレギュラーだったんです。
そこで共通の思い出があるものですから、その話に花が咲いたわけです。
収録中、喋りながら、当時のことを思い返していたんですが…そういえば1年目の芸人なんて、やることなすこと上手くいかないんですよ。
毎回スベっていました(笑)
今も毎回スベっているんですけども、今は(こんなこと言うのもアレですが)、「スベったからが本番」みたいなところがあって、「どう巻き返すか?」が僕のメイン事業になっていたりします。
要するに、スベっても悲壮感が出ないんです。
「西野さん、今、めちゃくちゃ、おスベリになられてますよ」ということを共演者の方も、ファンの方も面白がってくださる。
でも、1年目の芸人…しかも、キングコングみたいな、なんか「メインを張ろうとしている芸人」のスベりって、痛々しくて見てられないんです(笑)
そんなことは自分達が一番わかっています。
で、隣を見ると、おぎやはぎサンとか、劇団ひとりサンといった先輩方がバンバン笑いをとっている。
羨ましいなぁと思いましたし、嫉妬するレベルにすら達していないのに、嫉妬したりもしました。
皆、ありますよね、そういう時期って。
今は自分の能力ウンウンの問題ではなく、僕は道を外れたところで細々と活動させてもらっているので、そもそもの競技が違う為、「誰かに嫉妬する」ということは、ほとんど無かったり…もしかすると、手がけているプロジェクトに手一杯になっていて、嫉妬する余裕が無かったりするのかもしれませんが、
やっぱり若手の頃というのは、同じレールを走らされる分、優劣が明らかになり、たくさん嫉妬しました。
基本、負けてばっかりだったんで。
数日前の放送でお話させていただきましたが、デビューまもなくの主戦場となった「カブンチョメンバー」の先輩方には全員嫉妬しましたし、ロバートの秋山竜ちゃんを初めて見た時は、嫉妬を通り越した衝撃がありました。
インパルスの堤下君のツッコミのパワフルさには憧れたし、ラーメンズさんのように独自のルールで活動されている芸人さんにも憧れました。
ラーメンズさんでいうとね、デビューから5年ぐらいが経った時ですかね、夜、突然、幻冬社の舘野さんから「西野に会いたがっている人がいる」と電話があって、飛んでいったら、そこに小林賢太郎さんがいらっしゃって、その時が「はじめまして」だったんですけど、開口一番「友達になってください」と言われて…それがね、メチャクチャ衝撃でした。
なんて不器用な人なんだ、と(笑)
もっと、おっかなくてオラオラの人なのかと思ったら、全然そんなことなくて、とても誠実で、それがまたカッコ良かったんです。
あの夜のことは、よく覚えています。
散々、呑んで解散した後に、小林さんの方から連絡があって、エレキコミックのやついさんのオールナイトイベントが新宿ロフトプラスワンでやっているということで、「乗り込んじゃおうぜ」という話になりまして、二人で夜中に再集合して、新宿に向かいました。
見上げたBLです(笑)
この時のエピソード(「友達になってください」)は、映画「えんとつ町のプペル」に入っていますので、そこは西野のドキュメンタリーなんだなぁと思って観ていただけると嬉しいです。
そんなこんなで、会う人会う人に、憧れ嫉妬していた若手時代ですが、中でも一番嫉妬したのは、嫉妬するのも恐れ多い話ですが、「立川志の輔師匠」です。
大喜利が得意な芸人、リアクションが得意な芸人…いろんな芸人がいますが、たぶん僕は、物語を作る芸人が好きなんだと思います。
今でも毎年、「志の輔らくご」を観に行かせていただいているのですが、たった一人で、あれだけの世界を作り、届けている姿が、もう憧れしかなくて、それが時間差で「嫉妬」に変わるんですね。
…「嫉妬」という表現が正しいのかな?
まさか恨んだりすることはなく、終演後に残るのは、「素敵なものを見せていただいて、ありがとうございます」という気持ちと、「それに比べて僕は何をしているんだ」という気持ちです。
それまでも僕は結構な売れっ子だったんですけど、生で志の輔師匠を観た時に身体中に電気が走って、「このままじゃダメだ」と思って、大きく大きくハンドルを切りました。
当然、今は走っているレールが違うのですが、「エンタメ」という大きな括りでは同じで、背中を追わせていただいています。
悔しさや、惨めさといった様々な感情は渦巻きますが、それでも、やっぱり、「20代のうちに、圧倒的な人を生で見て、力の差を見せつけられる」というのは、いいもんですね。
「嫉妬」というと、どうしてもネガティブな響がありますが、僕の場合は、明らかに前に進めてもらったので、良かったです。
今、こうして話しながら思ったことなんですが、「嫉妬」というのは凄い大きなエネルギーになるのですが、それをプラスに変えるか、マイナスに変えるか、そのことを決定付けるのは、一生懸命生きているかどうかで、自分が何の努力もせずに発生した嫉妬というのはマイナスに働いて、ともすれば「誹謗中傷」や「揚げ足をとる」ことに精を出してしまう。
一方で、一生懸命やっていたら、嫉妬する対象が「その結果を出すまでに積み重ねた努力」や、「その結果を出す前に背負った痛み」の想像がつくので、そこにはリスペクトが混じっている。
自分を前に進める為には、こっちの「嫉妬」を取りにいくことが大事なんだろうなぁと思います。
西野亮廣(キングコング)
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