東京五輪が失敗しているBBQ型エンターテイメント。「みんなで作る」はコスト削減じゃない。
最近、すっかりメディアで見なくなったキングコング西野です。宜しくお願いします。
自分で話すのはすごく気持ちが悪いのですが、「キングコング西野」の功績の一つに、「制作段階からお客さんを巻き込んで、制作過程すら販売してしまう」があると思います。
クラウドファンディングで制作費を集めて、著作権というものを曖昧にして、「お客さんに届けるものをお客さんと作っちゃう」というやつですね。
これを進化させたのが現在の「オンラインサロン」です。
実際問題、国内外で仕掛けている個展はサロンメンバーと作っていますし、各種イベントもそうです。
最近だとテレビCM(キャリオク)なんかもサロンメンバーと作っていて、自分達が食べたいものを自分達で作っています。
今、いわゆる「プロ」と呼ばれる人達だけで作っているモノって、僕の仕事に関しては、あまりないです。
プロが作って、お客さんに出すスタイルを「レストラン型」と呼ぶのに対して、
自分達がやっているような、お客さんが食べるものをお客さんと作るスタイルを「BBQ型」と呼んだりしています。
で、当時はこのBBQ型のエンタメに対して、批判もありましたし、今でも(一部)年輩の方は、まだ「お客さんに出すものは完成品でなければならない」といったアレルギー反応を起こしちゃうんですが、ただ、ここ最近は、かなり理解が深まってきたなぁという印象です。
「みんなで作る」は結構、いろんなところで見るようになりました。
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東京五輪に見られる「そういうことじゃない感」
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ただBBQ型の祖からすると、「BBQが上手く機能していないなぁ(…ちょっと雑だなぁ)」と思うことがあって、えっと…だいたい行政が仕掛けている見よう見まねの「みんなで作る」は失敗しています。
有名なところでは、東京オリンピックです。
「みんなで作ろう」と言っていますが、皆(お客さん)を参加させているのは「宣伝」だけで、「このハッシュタグでツイートしよ〜!」とか何とか言って、実際のところは「お客さんをテイよく宣伝に利用しているだけ」です。
椎名林檎さんか誰かが作ったモノを「拡散」するのがお客さんの役目で、「制作」にはタッチさせていない。
制作会議の場にお客さんがいないし、作品にお客さんが口を出すことはできない。
勿論、お客さんは「上手く利用されようとしている」ことが分かっているから、宣伝に熱がのらない。
そりゃそうですよね。
「東京オリンピック」は他人の作品ですから。
なので、東京オリンピックを盛り上げようとしている人って、(それを生業としている人以外では)皆さんの周りで見当たらないと思います。
「税金をかけてBBQ会場を作ったけど、お客さんが来ない」という状態です。
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「お客さん」は高い
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ここだけ切り取ると「もっともっと、お客さんを参加させろよ!」という結論になりそうですが、それもチョット難しかったりします。
「お客さんの声を反映する」って、すっごくイイことのようになっていますが、面倒が多いんです。
プロを「プロたらしめている」大きな理由として、「ふるい」にかけられて、勝ち上がってきた…という背景があります。
アイデア一つとっても、プロは打率が高いんです。
お客さんを巻き込むと、まったく使い物にならないアイデアに耳を傾ける時間や、まったく使い物にならない大量のデザインを「ふるい」にかける時間が発生しちゃうんてすね。
そこにスタッフを割かないといけないので、コストがかかります。
打率の高いプロに発注した方が、安く済むんですよ。
多くの方が見落しがちですが、レストラン型の方が安く済むことが多いんです。
意外でしょ?
じゃあ、BBQ型を安く済ませるにはどうすればいいか?
お客さんからアイデアを募集して、最終決定をお客さんによる投票で決めちゃう。
これが一番です。
そうすると、コストも安く済むし、どこからも文句出ないですよね。
だって、お客さんが作って、お客さんが決めたものなのだから、責任者は「お客さん」だもの。
ただ、それでできたのが、オリンピック2020のマスコットキャラクターです。
デザインを一般公募して、小学生に選考させて、あれに決まったわけですが、(こんなこと言うとメチャクチャ怒られますが)あのキャラクターグッズ、誰も買いませんよね。
誰からもクレームは来ませんが、売上が立たないので、ウン億円レベルで税金が溶けています。
つまり、クリエイティブの現場に民主主義を持ち込みすぎると、それはそれでロクでもないことになる。
お客さんが食べるモノをお客さんと作る「BBQ型」というのは、この問題とのせめぎ合いです。
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「BBQ型=丸投げ」じゃないよ
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冒頭で「国内外で展開している個展もサロンメンバーと作っている」と申し上げましたが、それは嘘じゃありません。
エッフェル塔の個展にしてもゼロからサロンメンバーさんに参加していただいています。
ただ…
そこには必ず「伴走者」としてプロを入れています。
プロがやっても、素人さんがやっても、クオリティーに差が出ない部分を、サロンメンバーにお任せしています。
そして、最終決定は「多数決」なんかじゃありません。
最終決定者は「僕」です。
エッフェル塔の個展でいうと、最高責任者を務めた「セトちゃん」というウチのスタッフです。
多数決で決めるのならばリーダーは要りません。
それで面白くないものが出来上がったら、最終決定を出したリーダーの責任ですし、
面白いものが出来上がったら、それを作ってくれた皆の手柄です。
BBQ型は「仕事の丸投げ」ではありません。
お客さんが火傷をしないように、
テントに火が引火しないように、
お客さんがつまづかないように、
お客さんが怪我をしたら秒速で対応できるように、
BBQ会場を設計しなきゃいけない。
そこには、レストラン運営以上のコストがかかります。
昨日、オンラインサロン内で、僕の絵本最新作の編集作業を皆でやったんです。
プロット(ストーリーを箇条書きしたもの)をサロン内に投げて、皆で、文章の言い回しを考えていくんです。
当然、そこには「文章が得意じゃない人」も参加していますし、「ストーリーを作ったことがない人」も参加しています。
その人達が、「こうした方がいいんじゃない?」みたいな提案をしてくださって、僕が、その一つ一つを見ていくわけです。
これ、メチャクチャ時間がかかるんです(笑)
そりゃね、キングコング西野が一人で書いた方が早いんです。
結構、皆、忘れているかもしれませんが、キングコング西野って、ベストセラー作家で、文章がベラボーに上手いんです。
西野一人がやれば1時間で済む作業を、6万人に手伝ってもらって、24時間以上かかっている(笑)
この時点でのコストパフォーマンスは最悪です。
ただ、西野というプロが伴走しながら、作るところから6万人でやった方がいいんです。
6万人一人一人にとって、「自分が作った作品」になるから、届ける(宣伝をする)時に熱が乗るんです。
BBQ型というのは、「丸投げ」とか「コストをかけない」っていうことじゃないよ、という話でした。
今日のサロンの記事は、昨日の6万人の編集作業で気づいたことを書きまーす。
では、後程。
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