約3年に絵本『えんとつ町のプペル』を無料公開してみたところ、各局のワイドショーで取り上げられるぐらい炎上しました。

有名な声優サンから「作品を無料で公開してしまったら、作品の価値も、クリエイターに支払う対価も下がってしまう!」と批判され、その声優のファンの方からも、ヤイヤイと言われたので、「広告戦略として、まもなくアニメ業界にも無料公開の波が来るので、無料公開を批判する声優サンは仕事ができなくなっちゃうし、無料公開を批判するファンのアニメを観れなくなるので、たぶん批判しない方がいいと思いますよ」と返したら、さらに炎上しちゃいました。

https://r25.jp/article/581356883170827173

当時はウン百人~ウン千人のクリエイターさんと、そのクリエイターさんを応援しているウン十万人~ウン百万人のファンの方々から、ずいぶん怒られましたが、これに関してはお相手が10億人であろうと、一人で太刀打ちできる内容であったので、「残念ですが、皆さんが間違っています。今すぐ考えを改めないと、痛い目に遭いますよ」と最後まで言い切ったことを記憶しています。

未来のクリエイターさんやそのファンの方々を守る為にとった態度だと理解していただけると嬉しいです(※当時は、それなりに心苦しかったです)。

その後、書籍の無料公開は出版業界の広告戦略のスタンダードとなり、最近だと『進撃の巨人』も、ほぼ全巻が無料で読めるようになりました。
期間限定の無料公開であろうが、無期限の無料公開であろうが、そこにある狙いは「一旦、無料で読んでいただいて、その後…」といった感じで“収益化を後ろにズラす”というもの。

これは、より大きな利益を上げる(=よりクリエイターさんにお金を落とす)為の無料公開で、マーケティングの世界では、『フリーミアム』と呼ばれています。
スーパーの試食のノリと同じで、昔からある手法です。

実は、間接的ではありますが、TVアニメも昔からこの形をとっています。
TVアニメはスポンサーさんが制作費を払って無料公開されているわけですが、その無料公開されたアニメの合間に流すCMの商品を一部の視聴者に買ってもらうことで、スポンサーさんは制作費以上のものを回収しています。




さて。
今日は「無料公開、その後」というテーマで、お話させていただくわけですが、実に興味深い結果が出ています。

僕は絵本やビジネス書など、結構な数の本を出させてもらっているのですが、出版から数年が経った今も変わらず売れ続けている作品は無料公開した『えんとつ町のプペル』と『新世界』の2冊なのです。

Googleの検索結果が非常に面白くて、『えんとつ町のプペル』で検索すると、Amazonのページよりも先に、無料公開ページが先にくるんです。
3年前に炎上したあの瞬間だけではなく、3年間この調子で、ずーっとAmazonページよりも無料公開ページが検索され続け、無料公開で知ってくださったうちの何人かが買い続けてくださっているので、流行りではなく、文化として定着したのだと思います。

【ラジオ】「ダンピングの意味を間違うな」

今日のブログは「無料公開やってみたけど、いい感じだよ」という経過報告ですが、ただ一つ言えることは、マーケティングは「掛け算」に過ぎないので、掛ける対象がゼロであれば、ゼロです。

つまるところ、「クオリティーでブッちぎっていないと、無料公開なんてしても、自分の作品がツマラナイことを広めるだけなので、マイナスでしかないっすよ」という話です。

ここを見誤る方が多いですが、結局、モノを言うのは作品のクオリティで、この世界はどこまでいっても、シンプルに腕力勝負。
望むところです(*^^*)


西野亮廣


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