オンラインサロンの中の内容が不透明すぎるのも怖いと思うので、10日に1回ほど、オンラインサロン内に投稿している記事をブログにアップしているのですが、今日がその日です。
今日は9月21日にサロン内に投稿した記事『あの日、僕らは地球滅亡を少しだけ信じた』を無料公開します。

内容に共感いただけたら、記事のシェアをお願いします。

それでは、どうぞ。

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あの日、僕らは地球滅亡を少しだけ信じた。
9月21日 【投稿者】西野亮廣


皆さんも薄っすらと気づいているかもしれませんが、僕が株式会社NISHINOの社長を辞めて(ニウエから帰ってきて)からというもの、ギアが2段階ぐらい上がりまして、ここ最近はレンガぐらいなら鼻息で吹き飛ばせるほどの熱量で暑苦しい記事を投稿させてもらっています。

本日は、もしかすると昨夜の『ダウンタウンなう』を御覧になられて新たに入会された方がいらっしゃるかもしれないので(そういった方に「いきなりフルスロットルのビジネストーク」は少し重たいと思うので…)、いつもとは趣向を変えて、『西野亮廣の日記』をサロン内で公開したいと思います。

…というか、そもそも「お前、毎日、あれだけのブログと、あれだけのサロン記事を書いて、ときどきビジネス書も書いてんのに、さらに日記まで書いてんの?」という話ですよね?

ええ。
僕、実は『日記』を書いているんです。
もちろん毎日ではありません。

今、僕は、たくさんのスタッフと一緒に、たくさんの仕事を進めていて、自宅に帰るのは月に3日ほど。
国内外を飛び回って、朝から夜中まで、到底太刀打ちできない仕事に立ち向かい、勝ったり負けたり(まあ、だいたい負けています)。

いつまでも同じ場所にいることなんてなくて、毎日、大量の情報が飛び込んできます。
おかげで「先週」なんて大昔で、先週の自分が何をしていたかなんて思い出せません。

夢のようなスピードで記憶が消えていく中、ときどきヒョンなキッカケで何年も前の記憶が甦ることがあって、そんな時に備忘録として日記を書きます。

先日、梶原君が『しくじり先生』で、デビュー当時の話をしていた時に、僕達がコンビを組んだ「1999年」の記憶が甦って、慌てて日記帳を開きました。
今日は、その日記を公開したいと思います。

人に見せる為に書いたものじゃないので、言い回しの不自然さはスルーしてください。
それではどうぞ。

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▼あの夏、僕らは地球滅亡を少しだけ信じた
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1999年、7の月。
空から恐怖の大王が降ってくるだろう。

ノストラダムス

 
 
1990年代後半、世界は終わりに向かっていた。
6432人の犠牲者を出した「阪神淡路大震災」が起こり、宗教団体による無差別テロ「地下鉄サリン事件」が起こり、ついには北朝鮮が大陸間弾道ミサイル「テポドン」の発射実験をスタート。
その後には、コンピューターが誤作動を起こし各国のミサイルが誤発射するとも言われている「2000年問題」も控えていた。
核戦争の足音が聞こえていたんだ。



時代は、「この先、何か大変なことが起きそう…」という緊張感に包まれていて、そんな中、ノストラダムスという名の預言者が人類滅亡を示唆した「1999年7月」がやってきた。

 
今の10〜20代の子達は鼻で笑うだろうな。
ルネサンス期の占星術師の予言には科学的な根拠など一つもない。
「過去に予言を的中させている」と言っても、外した予言も星の数ほどある。
そんなもの、球数を打てば、うち何発かは当たるだろう。予言でも何でもない。

分かっている。
当時から僕らも「そんなことが起こるわけがない」と思っていた。

 
でも、少しだけ。ほんの少しだけ。
1999年7月。
あの夏、僕らは地球滅亡を少しだけ信じたんだ。

 
バカみたいだろ?
なんで信じたのかなぁ。

色々なことが重なったのと、「世紀末」という、どこか終末を匂わせる言葉が後押ししたのもあったかな。よく分かんない。

僕なんかはまだ冷めた方だったけど、梶原君は「ここで頑張っても、どうせ、終わるんだし…」と軽く絶望していたよ。
梶原君はいつも面白いね。

 
結果、「ノストラダムスの大予言」は大きくハズレた。
1999年7月は天変地異も起きなかったし、核ミサイルも宇宙人も降ってこなかった。

いつものように8月が来て、秋が来て、冬が来て、いつものように紅白歌合戦がおこわれて、拍子抜けしながら世紀末が過ぎ去った。

地球は終わらなかったんだ。

だけど、「ノストラダムスの大予言」がハズレたあの夏の日を境に、あきらかに時代はこれまでと違う方向へと歩み始めた。

僕と同じ世代の人達は、なんとなく感じていたんじゃないかな。

テレビをつければ、リアルな情報だけが流れ、お笑い芸人が正論を語り、情報番組の出演者が他人の色恋沙汰を裁き、昨日も今日も謝罪会見。

矢追純一のUFO特番は無くなり、超常現象を取り上げる番組も消えた。
「宇宙人」も「オバケ」も「Mr.マリック」も、皆、いなくなったんだ。

 
1999年7月。
あの夏、地球は終わらなかったけど、ファンタジーが終わった。
同じタイミングで現れたインターネットが様々な可能性を生んだ裏で、あらゆる嘘を殺し、世界はすっかり正しくなり、そして息苦しくなった。

僕が今の仕事を始めたのは、ちょうどその年で、ファンタジーが終わっていく姿を横目に、僕は、現実を切り売りする仕事と向き合っていた。
当時はその日一日を生きるのに必死で、薄っすらと漂っていた違和感の正体を突き止める余裕もなかったけど、今なら分かる。

 
僕は子供の頃からずっと、ファンタジーを作りたかったんだ。

「地球滅亡」というファンタジーはロクでもないけど、だけど、そのロクでもないファンタジーに振り回されていたあの夏、たしかに僕らの胸は踊っていた。

最近は、ようやく確かな手触りを持って言い切れるようになった。
「嘘がない世界は息苦しい」

今度は誰かの胸を躍らせる側になって、誰一人傷つけない嘘をついて、あの夏のような時間を作ってみようと思う。

2019年9月 某日 西野亮廣


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