「あのスピーチは、大博打でしたよ(笑)」

【500万再生突破!】話題になったスピーチの裏側で、キンコン西野が仕掛けた大博打とは?


今年の春、近畿大学の卒業スピーチの大役を任されました。
歴代のゲストスピーカーは、堀江貴文さんや、山中伸弥さんや、又吉直樹さん…といった錚々たる顔ぶれ。
この歴史に泥を塗るわけにはいきませんので、やはり大役です。

結果的に、このスピーチはYouTubeにアップされ、再生回数が520万回(2019年9月11日現在)を突破し、大変な話題となりました。


大きな結果の裏側には、当然、大きな博打(勝負)があるわけですが、このスピーチで僕が何の勝負をしたのかは、あまり論じられていないので、今日はその「勝負」について解説したいと思います(*^^*)

スピーチのおおまかな構成は以下のとおり↓

①登場したはいいものの、パラパラの拍手
②登場をやり直す。
③過去の失敗エピソードを数本披露。
④登場やり直し&失敗エピソードで『笑い』をとったことを受けて、「過去は変えられる」と言う。
⑤11時台だけは針が重ならない『時計の話』をする。

時間配分としましては、③にかなりの時間を割いたので、途中までは、「コイツは何でエピソードトーク(すべらない話)を披露してるの?」という空気になっていたと思います。

そのエピソードトークは、スピーチの最後で回収するわけですが、冒頭で「ノープランで出てきました」と言っているので、すべて見終わった人からは、「さすがにノープランは嘘だろ」という声がたくさん届きました。

たしかに、さすがに全てノープランというわけではありません。
事前に決めていたことが2つだけあります。
それがコチラ↓

①登場で盛り上げない(=登場で失敗する)。
②様々な失敗を披露して、ラストで全て回収する。

出番前に、司会者の方に「『盛大な拍手でお迎えください』は絶対に言わないでください。くれぐれも盛り上げないでください」とお願いしました。
そして、近畿大学のスタッフさんには「オープニングVTRをいつでも出せるスタンバイをしておいてください」とお願いしました。

「人生に失敗は存在しない。だから挑戦してください」というメッセージを贈ることは決めていたので、そこに説得力を持たせる為に、彼ら(卒業生)の目の前で失敗し、やり直せる瞬間を見せることを前提で、登場を構成したわけですね。
一応、エンターテイナーなので、こういった下準備はキチンとします。

ここまでは準備していたので計画どおりですが、今回のスピーチの大博打は、登場した後の『エピソードブロック』ですね。

『エピソードブロック』の役割は、過去の失敗談を語り、それを笑いにして、スピーチ後半の「ほらね。過去の失敗も、こうしてネタにした瞬間に輝きを放ったでしょ? 失敗したところで止めなければ失敗は無いんだよ」というメッセージに繋ぐことです。

これが、とんでもなく恐ろしい博打なのですが、つまるところ、エピソードトークで絶対にウケなきゃいけなかったんです。


失敗談で失敗してしまうと、「失敗は存在しない」というメッセージが嘘になっちゃうわけですね。

絶対にウケなきゃいけないのですが、大学の卒業式って、ウケる雰囲気じゃないんです。
1時間ぐらい、ずーっと静寂(堅苦しい儀式)が続いた舞台に放り出されるわけですね。
テレビやライブは、本番前に前説が入って、そこで会場を温めてから本番がスタートするわけですが、卒業式のゲストスピーカーの舞台は、会場が温まってないんです(*^^*)

舞台に出てみないと、そして、そこで話し出してみないと、お客さんの感じが分からないので、いかようにでも対応できるように、このブロックは本当に『ノープラン』です。
一つ目のエピソードのウケを見て、「これで、これぐらいのウケならば、次はあのエピソードを放り込んでみようかな」といった感じですね。
この辺は僕の本業です。


プロの芸人であれば、この場でエピソードトークを放り込むことが極めて危険は行為であることは百も承知ですが、一方で、この博打の参加権は芸人にしか配られないので、芸人として挑んでみました。

ちょっと怖かったですが、挑んで良かったです。
あそこで芸人として挑まなかったら、一生後悔していたでしょう。

今後も、それがどんな舞台であれ、挑戦権を手にした時は、怯まずに挑戦していきたいと思います。
あなたも頑張って。



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