芸人をやりながら、絵本を描いていると、「お前は何がしたいの?」と言われることが少なくありません。
その人達の言い分は、「芸人なんだから芸人だけやっとけよ」なのですが、芸人が絵本を描いてはいけない理由がイマイチよく分かりません。

やりたいことをフルスイングでやると、やりたいことがやれていない人から煙たがれるのは世の理ですが、とくに日本は、“肩書きを越境すること”に激しいアレルギー反応を見せます。
この国では『初志貫徹』こそが正義で、それでいうと僕の初志は「面白いことをする」なので、今も貫徹しているのですが、肩書きを越えてしまうとレッドカードが出されてしまいます。
もちろん無視しますが。

カジュアルに転職する人や、複業家に対して、「一つのことをやれ!」とバッシングを続ける人は、2018年に倒産した国内企業の平均寿命が23.9年(金融・保険業は11.7年)ということを恐らく御存知なくて、高確率でまもなく御自身も転職を余儀なくされることになるのですが、その時、どう立ち振る舞うのでしょうか?
恐らくその時は、「他人をバッシングした自分の過去」には静かに蓋をして、危機を乗り切るのだと思います。
これまで、そういう人をたくさん見てきました。

今の若い子に対して、“一部の”オジサン達のマウントの取り方が下品だなぁと思うのは、「一つの職業で走りきれた世代」が「一つの職業では走りきれない世代」に対して、「我々のように一つの仕事を勤めあげてこそ一人前」と言っちゃっていることで、本当にダサくて気持ちが悪いです。

んでもってここからは、今、まわりの大人連中から圧力をかけられて、狭苦しい思いをしている若手に向けたメッセージになるのですが…

とにかく、これからの時代は『肩書き』という発想は捨てた方がいいと思うよ。

守らなければならないのは、『肩書き』などではなく、キミの『理念』や『キャラクター』で、「どういうことを大切にしている人間なのか? どこに向かおうとしている人間なのか?」といった“キミのキャラクター”をハッキリしておくことが一番のリスクヘッジになる。

仕事をすることが目的になり、その過程で自分のキャラクターを殺してしまうと、転職する際に潰しが効かない。
また、優秀な人間はいくらでいるから、尚更、何者か分からない(キャラクターが明確でない)子には基本的には声がかからない。

キミのまわりの大人は僕も含めて勝手なことを言うけど、聞いているフリをして、自分の未来の為になる言葉だけを吸い上げればいい。
くれぐれも大人の言うことを鵜呑みにしちゃダメだし、多数派の声に流されちゃダメだ。
多数派は、大昔に勝って、今は負けているから多数派なんだよ。

パン屋さんをやりながら、バレリーナの夢を追いかけてもいいじゃない?
誰が何と言おうと、キミの舵はキミが握るべきだ。

ただ一つ。

キミが責任を背負いきれない挑戦は『挑戦』とは呼ばない。
『挑戦』と銘打って、素人のキミがF-1カーに乗って、ハンドルミスで死人が出たら、キミは責任を追えないだろう?
そのことを踏まえて、挑戦してみてください。

僕はキミよりも大きな挑戦を、キミよりも速く仕掛けることで、キミの前を走るよ。
追いつかれた時は潔く子分になるので、一声おかけください。

頑張ってね。
負けるなよ。


西野亮廣




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