世の中が、これだけエンタメで溢れかえって、これだけ選択肢が増えてしまったので、まったくもって時間が足りません。

2時間を奪われるエンタメは結構な罪で、ハズレ映画を観たときなどは「恨み」すら発生してしまいます。

そんな中、書籍は、さらに僕らの時間を当たり前の顔で奪っているわけですが、現実逃避が目的の書籍ならそれでもいいのですが、「行動しろ!」を叫んでいる『ビジネス書』に対しては、「行動する時間を奪うな!」と思うようになってきまして、来月出版する『新・魔法のコンパス』は1時間で読みきれるように設計しています。

もう本当に余計な部分をズバズバ切っているのですが、せっかく生まれたのに切り落とされた文章が可哀想なので、今日は『新・魔法のコンパス』でボツになった文章の一部をコチラで公開します。

どうぞ!
| 不安定たれ

以前、お仕事で『鉄』と『錆び』ついて少し勉強したんだけど、これがなかなか面白い。

 鉄は、鉄鉱石という「錆の塊」から、人工的に酸素を取り除いて作ったものなんだって。
ボクらは『錆び』を「劣化」のように捉えているけど、厳密に言うと「酸化」で、あれが本来の姿だ。

「万物はより安定した姿に変化する」が、この世界のルールで、『鉄』という「不安定な姿」から、『錆び』という「安定した姿」へと変化しているというわけだ。

この理屈で言うと、ずっと変わらない『庭園』なんかもそうだよね。
そもそも『庭園』というのは、手間をかけ続けた「不安定な姿で」、手間を省いた途端に「安定』した姿(=森)」に向かってしまう。

 『鉄』や『庭園』が存在できている理由は、その「不安定な姿」にニーズがあるからで、このことは、ボクらのように「お客さんに応援してもらうことで生きている人間」にも同じことが言える。

いいかい?
ほっといても、人は安定に向かう。
そんな中、表現者が生き残るには、鉄や庭園のように、手間をかけて、『ニーズがある不安定な姿』になるしかないだろう?

「アイツ、間違ってるけど、あれはあれで、いいよね」と言われるような。


今、ボクの元には大きな仕事がポンポン入ってきている。
数年前に植えた苗が成長して、今は『刈り取り時期』に入っているのだと思う。
少し成功しちゃったんだと思う。

こうなったら終わりだね。

 刈り取ってしまえば、ハゲた土地が残るだけなので、全て刈り取る前にボクは(25歳から耕し続けた)この土地を離れなきゃいけない。

 それなりの成功をおさめた『テレビ村』から外に出た13年前のようなアクションを、もう一度やらなきゃいけない。

今のお仕事はスタッフさんに任せて、『芸人』と『絵本作家』を辞めて、また新しい職業に就こうと思っている。

「おいおい、また捨てんのかよ!バカなの?」と怒られそうですが、ボクは起業家ではなくて、表現者。
皆が安定に向かう中、表現者も一緒に安定に向かってしまったら、そこには何もない。

不安定であり続けるから「応援シロ」があるわけだ。

なので、勝っちゃった分野はとっとと辞めて、また間違いたいと思う。
間違い続けなきゃいけないんだよ、ボクらは。
その上で、いかに愛されるか?という勝負だ。

 ここに人生を懸けるのは怖くて仕方がない。
まったくもって不安定だ。
だから面白い。

ところでキミはどうする?


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