テレビの世界に飛び込んでみて、まずバラエティー番組で驚かされたのは、たとえば、MCが「○○のコーナー!」という“ドナリ”を奇跡的に面白い噛み方をしたとする。
その時、まわりの演者は「チャンスだ!」とばかりに、その失敗をイジッて、大爆笑まで持っていく。
皆が「良かった良かった。さっそく盛り上がった」と一段落した次の瞬間、

「では、あらためて、ドナリをお願いします」

と、やり直させる番組ディレクター。


へ?

いやいや、バラエティー番組だから「笑わせる」ことが目的で、そこに向かって会議を繰り返して、台本を用意して、美術セットを用意したんじゃないの?
今、目の前で「笑い」が起こったのだから、NGでも何でもなくて、大成功。
目的は達成してんじゃん。

ところが、
頑として、“用意した台本どおりに進行しようとする”ディレクター。

たとえば、それが情報番組なら分かる。
情報を伝えることが目的で、そこに向かうまで寄り道しすぎてしまうと、伝えなければならない情報が伝えられなくなってしまうからだ。

ただ、繰り返して言うが、バラエティー番組の目的は「笑わせること」で、「台本を消化すること」ではない。
台本に書けないような「笑い」が起これば、万々歳だ。
それを使わないで、どうする?

『ゴッドタン』先生は、そのあたりを徹底していて、オープニングトークが盛り上がりすぎたら、用意していた台本を全てスッ飛ばして、オープニングトークだけで放送を終えることも珍しくない。
お気に入りの洋服とアナル童貞と髪の毛を失ってしまうこと以外は、最高だ。

ボクは年に一度、プライベートで『デザインフェスタ』というイベントに自分のブースを出展しているのだけれど、お客さんが入っていないブースは、往々にして、最初に決めた形を変更しない。

客層がどんなで、
どの方向にお客さんが流れていて、
何が面白がられていて、
お客さんの手荷物はどれくらいで…
そんなことはお構いなしに、とにかく“前日までの自分が決めたルール”を頑として変えない。

当然だけれど、物販ブースの組み方や、物販ブースに並べる商品の点数(作品数)によって、売れ行きは大きく分かる。
予測通りにいくこともあるし、予測が外れることもある。人間だもの。

風が吹こうが、雨が降ろうが、ヤリが降ろうが、
バカはとにかく「変更」しない。
昨日までの自分が作ったルールに従うことを「安全策」として捉えている。それがバカの流儀だ。


『レターポット』を作るときに、開発リーダーのヤン君から「アプリにした方が何かと使いやすいけど、アプリにする?」と訊かれた。

アプリにすることのデメリットを訊いたら、「システム改善のスピードが遅くなる」と返ってきたので、当面、『レターポット』はアプリにはしない。

夜な夜な、作業部屋のホワイトボードを使って、何百回も何千回もシミュレーションをしたけれど、それらは成功確度を上げるための作業でしかなくて、やっぱり、昨日までのボクは判断を誤ってしまう。
時代や、お客さんの流れは秒速で変化するからだ。

『レターポット』では、レターを贈るページの下の方に『最近やりとりしたユーザー』を紹介する枠があるのだけれど、これがまったく使わない。


読み誤った。
完全にボクのミスだけれど、すぐに変更するので、これで一歩前進。それでいい。


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