去年、『お金の奴隷解放宣言』と題して、絵本『えんとつ町のプペル』を全ページ無料公開したところ、日本中から怒られた。

(その時の記事↓)

おそらく数万人~数十万人が怒りの声をあげたと思うんだけれど、これについて1ミリも反省していないのが私だ。

「無料公開なんてしたら、『お金を払わないのが当たり前』という風潮になって、クリエイターが食いっぱぐれるだろ!」

という意見が、数万件届いたが、 

「ここで無料公開を否定したら、まもなくあなた方の首が絞まりますよ」

とお返ししておいた。
結果、「無料公開」は2017年の出版業界の販売戦略のスタンダードになり、無料公開を大声で否定していた人達は、そこに手を出すことができなくなった。
5年前、クラウドファンディングを大声で批判していた人達が、今さらクラウドファンディングに手を出せなくなっているのと同じ状況だ。

その時は、とある声優さんが大きな声で批判されていたのだけれど、本当にやめた方がいいと思った。
今後、その声優さんが絡む作品の販売戦略として「無料公開」という選択肢は普通にあるし、その時に、その作品に参加していたら「自分の場合はアリなのかよ」という矛盾が発生するので、2手先で詰む。

このことは『革命のファンファーレ』にも書いたのだけれど、「無料公開は無料」だと考えている人が少なくないが、その実、無料公開は無料ではなくて、マネタイズのタイミングを後ろにズラしているだけだ。
事実、『えんとつ町のプペル』は無料公開後に売り上げをグンと伸ばした。
ちなみに、その後、いろんな出版社が無料公開をしたけれど、そのほとんどが、ただ無料公開をしただけで、回収の設計がまるでできていなかった。
路上パフォーマーが投げ銭箱を用意していないのと同じだ。

このあたりはもう少し経営を勉強されて、それより何より、今の人達がどこで心が動いているのか、組織のトップが現場に足を運んで、生の声を聞いた方がいい。
それをサボると、こんなお粗末なことになる↓


こういう人達が「本を読みなさい」「本は面白い」と叫べば叫ぶほど、「本を読んだら、こんな残念な人間になってしまうのかよ」というマイナス宣伝になってしまうので、出版不況に拍車をかける一方だ。
少なくとも僕には、このような出版社(代表:佐藤隆信さん)に自分の作品を預ける勇気はないので、僕が新潮社さんから本を出すことは未来永劫ない。
当然、僕の本を面白がってくださっている方々が僕の本で新潮社さんにお金を落とすことはない。


「風が吹けば桶屋が儲かる」じゃないけれど、全ての言動はチェーンで繋がっているので、時代が変われば、当然、一つずつ遡って、ルールや道徳をアップデートしていく必要がある。


さて、『お金の奴隷解放宣言』についてだが、その心は、「人生の主導権を『お金』に握らせるな」だ。

「お金なんて要らない」と言っているわけではなくて、「テクノロジーの進化によって『お金』が要らない場合も出てきているのに、なぜ、『お金』が発生する前提で動きを決めてしまっているのだ?」と言っている。

絵本『えんとつ町のプペル』の無料公開の場合でいえば、たくさんの人に見てもらうことが目的で、さらには、それによってクリエイターが食べていけることが目的なのだから、「だったら、今の時代は、この時点では無料にした方がいいでしょ」という話だ。



これも『革命のファンファーレ』に書かせてもらったんだけど、昨年の「無料公開」というアクションで見えたものがある。

それを気づかせてくれたのは、無料公開サイトを見た方からの、こんなメールだった。

「無料で見させていただきました。『えんとつ町のプペル』本当に感動しました。どのような形で御礼を伝えれば、西野さんやスタッフの皆様に喜んでいただけるのか考えた結果、今から本屋さんに行ってプペルを買いに行くことにしました」

お客さんは何でもかんでも無料にしてくれなんて思っちゃいない。
モノが売れない理由は「有料だから」ではなくて、買う理由が不足しているからだ。
理由さえクリアしていれば、クリエイターの支援で作品を買ってくれることもある。
「100円なら買います、200円なら買いません」と数字で線引いているわけではなく、特に今の人達は、そこにあるストーリーにお金(自分の時間)を払っている。


2017年の『お金の奴隷解放宣言』では『えんとつ町のプペル』で、「絵本」という有料ものを無料にしてみた。

2018年の『お金の奴隷解放宣言』では、『レターポット』で、「文字」という無料のものを有料にしてみた。

根底にあるのは、どちらも僕ら(作り手やお客さん)が、“お金に使われているわけではなく、お金を使っている”という点だ。

有料のものを無料にした去年の実験に比べると、無料のものを有料にする今年の実験の方が遥かに難しいのだけれど(単純に説明が難しい)、しかし、一ヶ月前のリリース時に掲げた「言葉で回る経済圏を作る」という目標には、着実に向かっていて、なんと、昨日、ついに…
(全メニュー)レター払いの美容室が出てきた。

「ありがとう」という言葉で髪が切れて、
「ありがとう」という言葉でカラーリングができて、
「ありがとう」という言葉でパーマがあてられる美容室だ。

コチラのお店→charm

レターポットのユーザー数は4万3000人。
地球がこれだけ広いのだから、言葉で回る世界があってもいい。
まるで、おとぎ噺のような。



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