ポロホテルのディナールームは変わってますのよ。6階のフロアを見通す作りに成って居て、南北のガラス窓から旧市街と闘牛場とが見下ろせる様に成ってますのよ。何とも珍しいのですが、ウエイトレスさんにお聞きしましたのよ。

    「 素晴らしいわ。お日様を浴びながらのお食事何て、ホテルでは味わえ無いのね。此のフロアの広さでしたらパーティーも為さるのでしょう。厨房は地下でしょうから、準備するのに大変でしょう。」

       半分は厨房から遠い処にディナールームを作った不見識と、其の準備に追われるでしょう方たちへのお慰めを込めて話しましたのよ。


    「 いーえ、困りませんのよ。新市街が見下ろせる西側の目隠しも兼ねて厨房を作って有りますのよ。街にお住いの人たちの要望も有りますから、此処を建てた時に市街を覗き見るのは禁じられて居ましたのね。ですから東西に延びる作りにして、南北は開放的に成って居ますけど、わざとテラスは作らない様式に成って居ますのよ。お住まいの人たちに配慮しましたので、西側を閉鎖するのに窓が無い厨房を作りましたのよ。」

    「 驚いたわ。水回りは解決できたとしても、パーティーに追われたら厨房の音が聞こえて来るでしょう。お鍋を落とした音なんかでパーティーが台無しに成っても困るでしょう。」

    「 ご心配には及びませんのよ。此処ではお泊りのお客様にサービスする様に成ってますのよ。パーティーは開かれませんが会合は御座いますけど、其れは全部スぺイン広場のパラドール.・デ・ロンダで引き受けますのよ。ロンダには学校も有りませんし、遊べる施設も禁止されて居ますのよ。お仕事で疲れた人たちが休める様に配慮して有りますのよ。」


   「 其れらしいのは判りますのよ。でもお休みだって有るでしょう。働くだけが人生では無いと思いますのよ。」

   「 いーえ、働くと申しましても皆さま農園をお持ちですから、ミカンが休むのは夜だけなんですのよ。其れに併せてお住まいの皆様方も夜はお休みに成りますのよ。ミカン畑は穏やかに見えますけど、季節風も強い日が有りますし、収穫が終われば手入れをし無ければ次の実りに其れが現れますでしょう。ミカンに笑われるだけでは無くて、周りの農民にも迷惑に成りますから、手を抜くことは許されませんのよ。」

    「 判ったわ。でも働いてる方って貴女たちの様に、ホテルのお仕事を為さってる人たちだって居るでしょう。」

        笑われましたのよ。


    「 此処で生まれた人たちだけなんですのよ。育ったのはミカン畑ですから、学校も病院も畠の外れに有りますのよ。都会の人たちがスポーツで体を鍛えるのでしょうが、私たちはミカンが運動も健康も教えて呉れるんですもの。今でもお泊りのお客様が少なければ、交代で畑に出ますのよ。ミカンに囲まれて居たら悩みなんか吹き飛んで仕舞いますのよ。」

       あっさり肩透かしでしたのよ。

            ミカンと共に生きるのを教えられたロンダでしたのよ。