ロンダはバルセロナとは違って観光はささやかに行われて居ましたのよ。

            観光収入に頼らなくても街が生きて居るのには、収入が有るからですのね。珠樹がロンダを原点と言ったのは、実に其の事でしたのね。

    「 珠樹は金には欲が無い様だ。」

とは弥太郎さんが仰いましたのよ。其れを取り上げてマリーに仰ったのは、

       下賤の言葉で弥太郎さんに銭をセビラナイのを―――ご免遊ばせ。別の言い回しで 【 弥太郎さんの資産の大きさを無視する態度 】を非難めいてマリーに訴えましたのよ。


       あながちなこじ付けでは無いのですのよ。例えばサラリーマンの名刺に役職の肩書が有るのをご自慢するのと同じなんですのよ。

       マリーはハーバードの学歴などヒケラカシタ覚えは有りませんが、人より優れて居るモノと言ったらハーバードしか有りませんのよ。其れと同じだとは申しませんが、弥太郎さんの地位とステータスと資産はご自慢なさるだけのお値打ち物なんですのね。

            珠樹は其れをヘとも思って居ない―――マタマタ失礼しましたのね、つい地が出ましたのはお見逃し頂けますでしょうか。


       其の事を心の隅で根に持って居ますから、お付き合いの浅いマリーに愚痴をお零しなんですのよ。下賤のグチと申しましたが、遥かに下の身分の者と思って居る珠樹に並ばれて居るのが、まだ解せないグチだとして置きましょう。

       いーえ、其の事は珠樹が理解と言うよりは心に掛けて居ても、まだジレンマを持って居るのではと思いますのよ。極く々々些細な問題ですが、人の心の奥には収入の桁が常に絡んで居ますのよ。太古の昔でしたら男が射止めて来た獲物の大きさが価値観と成ったのでしょうね。現代でも其れを小さいと思うお人と、決定的な判断の基準と為さる人が居ますのね。


       今、此れを理屈っぽく申しましたのは、珠樹が言った原点とはバルセロナと明らかに違うモノは、観光に頼らなくても収入が確保できるミカン園を見て何かを感じて欲しいとのサインと受け取りましたのよ。

             弥太郎さんのお金は表立って欲しがらなくても、其の大きさも認めて頼りにして居る現実は承知して居るのを、マリーに知って欲しいと

暗に打ち明けた女の焦りなんでしょうね。

       心を打ち明けられる人が居ないのを、お金のやり取りに絡めてグチッタと想えば好いのね。女って其うしたいじけが有りますのよ。

             愚にも付かない井戸端会議でストレスを発散するだけでは無いのですのね。弱いからとは申しませんが、逃げ場を塞がれた心の惨めさが、恵まれて居る珠樹にも多少なりとも有るのを知って欲しいグチだと思いましたのよ。