事務長推薦の付き添い看護婦の

マーチャンが帰って来ましたのよ。

   「 お部屋を開けて有りますから、何時でも入院為さるのが―――――」

   「 有難いな。珠樹にも初めての事だから、陣痛が始まって慌てなくても好いからな。」

   「 イヤよ、お心づくしは感謝しますけど、私普通に産みたいのよ。もう39週に入ってますから、陣痛が来ないのが不思議な位なのよ。入院すれば朝晩の検診が有って、赤ちゃんが下がって来ないと陣痛促進剤をお注射されるんでしょう。珠樹の赤ちゃんはチャンと心得てるのよ。動かない様に見えるけど、ほらお腹に手を置いて見てればゆっくり動いてるんですもの。

           検査し無くてもまだですってのが判るのよ。

        入院したら病院に任せるしか無いでしょう。珠樹は苦しくてもチャンと自然に産みたいのよ。」


   「 おいおい、お母上の教えが確かなのは認めるが、産まれてからもエンサンチャ病院の世話に成るのだ。だから勧められる様に早めに入院したらドウかな。」

           珠樹が泣き出しちゃいましたのよ。頼りにして居た弥太郎さんが病院の肩を持つのが悲しく思えたんでしょうね。商売上手の弥太郎さんにしてはトンだどじを踏みましたのね。急ぎ過ぎが珠樹の繊細な神経に触るのはご存じの筈ですのにね。

      ヤッパリ初めての体験に焦ったのでしょうね。時間を置いて此の際は、どっち着かずに答えを先送りする常套手段をお忘れなんですのね。

            マリーはドウすればって、決まってますでしょう。混乱して居る珠樹に味方するのにね。

       其れが秀才弥太郎さんが冷静さを取り戻すお時間なんですのよ。

            あら、弥太郎さんと競る積りなんですかって。ウフッ、修羅場を潜り抜けて来たのはマリーが何枚も上ですのよ。天才までとは行かなくてもね。