「 此れは今キッチリ話して置きたいのさ。珠樹のご両親は 【 小島の春 】 で知られている瀬戸内海のハンセン患者を収容して居た隔離施設の医者と看護婦だったのさ。」

        薄目を開けて聞いて居た珠樹がむっくり起き上ったのよ。

   「 辞めて、赤ちゃんが骨盤に頭を突っ込んだのよ。陣痛は無いからまだ胎盤は剥がれて居ないのよ。」

        付き添いさんが慌てて下り物を調べたのよ。

   「 まだよ、出血が無いから赤ちゃんの頭が骨盤を開く形に成ってるのよ。触って調べるわ。」

        で、弥太郎さんがカーテンで仕切って、ベッドの珠樹を調べたのね。


   「 ホントよ、大きな赤ちゃんね。此れが頭よ。完全に育ってるから頭骸骨がハッキリ判るわ。此んなにハッキリ出たいって言ってる子は見た事無いのよ。バァギナを見て好いかしら。」

   「 キャー、其処よ。お指が判るのよ。」

   「 貴女幸せよ。此れでご主人のサイズが判るのよ。チョットおいたするけど感じが掴めるかしら。」

   「 そうよ、一寸緩めるから子宮が下りてるのが判るかしら。」

   「 好いのよ、赤ちゃんは一休みしてるから興奮させては駄目よ。まだ横向きで寝てる感じなのよ。しっかり育ってるから何時間か休んだら回転を始める筈よ。チャンと見てるから、胎盤が離れた出血が有ったら陣痛が始まるのよ。」

        どうやら珠樹を落ち着かせた様でしたの。



   「 珠樹のご両親をチャンと知って貰いたいんだ。」

         付き添いさんが逆らいましたのよ。

   「 其れってご夫婦の問題なんでしょう。私が聞いても却って誤解を生む問題だったら、聞かない事にして置きましょう。」

   「 いや、何かと我々二人は目立つ存在なんだ。パパラッチが好い例だが、マスコミに名を借りて興味本位にデッチ揚げるのが現代なんだ。まして子供が学齢に達したら、娘からしつこく攻めて来るのさ。

            此のバルセロナは、フランコの独裁に守られてヨーロッパでは独自の地位を確保してるな。此れも直き終わるだろうから、貴族がフランコに代わって治安を守るとは思えないのさ。

            ヨーロッパ諸国はアメリカ民主主義に毒されないで、マスコミが大衆の上に立つのを何とか防いで居るな。

        ドウやらフランコの独裁が貴族と手を結んでパパラッチの暗躍を防いでいる様だが、其れも何時まで続くか何の保証も無いのだ。生まれて来る娘には其れに引きずられ無いで生きて行く様に育てたいと思って居るのさ。珠樹のご両親がハンセン病の隔離施設で、どんな立場に居られたのかをしっかり知って置いて貰いたいのさ。」

           深刻な話は初めて聞きましたのよ。マリーの知識では、日本のライの隔離政策が世界の非難を浴びてたのは知ってましたのよ。でも其れが珠樹のご両親の御命にまで関係したとは存じませんでしたの。