「 娘たちと会った時は、まさか教わろうとは思って無かったのよ。何とは無しに気に成ったのが、運命の出会いを感じたのよ。」
「 楠も其れは感じたわ。1953年の東北線って、青森まで20時間かかる鈍行も好いトコだったのよ。各駅停車で真っ暗な駅に停まっても、何時出発するのかも判らない暗い列車だったのね。其の中で襤褸を纏った娘たちが、修学旅行其のままで燥いでたんですのよ。何も聞かなくも女衒に引率されてたのは分かったのよ。それとなく吉原遊郭を聞いて見たら、政府が遣ってる飲み屋だからって少しはヘンな事をされても我慢できるって言うじゃない。安心し切ってる女衒を酔わせて大宮駅から逃げ出したのよ。先の宛なんか無かったけど、何とかして挙げたい娘たちだったのよ。」
「 其の気持ちは判るのよ。娘たちの歳は功に聞いてたけど、嘘で固めた競馬のノミ屋でお金儲けして居る功には二度と騙されなかったのよ。2年の同棲でも随分たかられて、其の度にスルっと逃げられてたのよ。ケインズの金鉱跡で暮らしてたアボリジニが、100年昔の娘たちがアメリカの捕鯨船に攫われて、性の奴隷にされたのも知ってたのね。気が付いたら逃げられてたでしょう。お陰でアメリカの捕鯨船の敵討ちで性の奴隷にされたけど、其れが功との最後だと思ったのよ。」
「 其れは功も言ってたわ。言っても聞かないからって置いて来たって言うじゃない。男の言い逃れに騙されるほどの楠では無いけど、お金を持ってるから逃がさない様にしてたのよ。」
「 そうよって言いたいけど、女の弱みを握られてるからドウ仕様も無かったのよ。来てみたら前とは違う大金が手に入るノミ屋を遣ってたでしょう。
税金を何とかしたいって言うけど、ノミ屋って博打なのよ。此れって税金の問題とは違うのよ。手入れが入ったら全額没収の上に、刑法バツが科せられて刑務所送りに成る犯罪なのよ。
其れを隠すのに手を貸したら、マリーもアメリカに強制送還されるのは見えてるでしょう。」
「 あら、功はオーストラリアの植民地を使ってマネーロンダリンしたって嘯いてたのよ。」
「 確かにマネーロンダリングはしたわよ。マネロンって正式には税金が安くて金利が高い国に投資する金融なのよ。オージーバンクの定期預金には
10年物から50年物まで様々なのよ。確かに金利は高いけど、契約年数以内で解約すると高額の違約金が科せられる仕組みに成ってるのよ。
生命保険と同じ仕組みに成ってるのね。途中解約した人たちが捨てるお金で成り立ってるのよ。オージーバンクが高金利を売り物にしてるのも其れと同じなのよ。50年定期の金利って
魔法に似た高金利だから、皆んな定款の小さい字を読まないで飛び付くのね。何年も高配当が振り込まれれば、何万口にも増やすでしょう。定款には金利は経済情勢で変動するって成ってるから、慌てて解約しようとすると法外な違約金が科せられるのよ。
企業の定款って、ほとんど右に倣えなのよ。何十ページもの書類の中で、数行に記された物は読み落とされるのよ。アメリカは民事裁判の国だと言われてるけど、民事裁判に拘束力が無くても定款には逆らったって読まなかったのが負けなのね。
オージーバンクの50年の定期預金を契約したから、功が生きてる内には手が附けられ無いのよ。」
「 其れだっら捨てたも同然なのね。」
「 其んなドジはしません事よ。名義は功に成ってるけど、連帯保証の付帯条件として保証人は其れを担保にする事が出来る様に成ってるのよ。800億の50パー迄だったら、保証したマリーに限って担保に出来るのよ。此れってオージーバンクの約款に記載されてるから、功は其れを読みもし無いで丸呑みで承認した形に成ってるのよ。だからもう、功は手も足も出せ無いのよ。
もう好いのよ。此れで敵は打ったから、もう放って置くのよ。
何時かは政府の手が入るでしょうから、泣きを見ない様に距離を置けば好いのよ。」
「 其れって娘たちは知ってるのかしら。」
「 カナダに連れてって聞き出そうとしたんだけど、頑として功に関わろうとし無いのよ。
賭博行為だから手が入ったら根こそぎ没収されるって教えたのよ。
五十嵐なんかいい気味だから垂れ込んじゃうって言うじゃない。其れを遣ったら根津にも家宅捜索が入るって山田に脅かされて、功はペッペだって大笑いしたのよ。あの子たち功を何とも思って無いのね。」
「 そうなのよ。子供たちが根津中に行ってる昼前に、功が迫って来るでしょう。ちゃんと1万円は先払いさせたんですのよ。
男って一度果てると直き溜まって鎌首を持ち上げて来るのね。功のアホは10分でチャレンジして来るのよ。
夜なんかだと楠の部屋で遣らせろでしょう。大声で悲鳴を上げて見せると誰れかしらが覗きに来るから、絞り加減のテクニックで3回の3万円まで引っ張るのはバレテタのよ。
娘たちは功が嫌いだけど、男のおスペのスエタ臭いは好き見たいなのね。其処がセックスの不思議なのよ。」
「 其うだったのね。其れで6年の苦労を知ってるのね。」
「 6年じゃ無いのよ。あら、神田市場の売春ごっこは2ヵ月で終ったのよ。功は根津に居付いたけど、4年で追い出したから充分貯金は出来たし、其れが有ったから十文字を卒業するまでの生活費には事欠かなかったのよ。マリーにキャッシュカードを貰ってるでしょう。功で稼いだお金は年金に仕様と思ってるのよ。
判るのよ、楠も歳だってのがね。オーストラリアに一緒に行ったら娘たちには私の先が見えてるから、私の骨位拾って挙げるって相談してると思うのよ。見捨てないのは判るんだけど、其れでは困るのよ。」
まあ、なんとなく判るのね。18歳の此れからと、36の姥捨ての小母さんをドウ持って行こうとしてるのかがね。娘たちと別れるのはマリーは寂しいけど、其の分珠樹が負ぶさって来る様に感じてるんですのよ。女って何処まで行ってもミジメったらしいのね。