「 貴女は世間知らずのお婆さんなのよ。」
楠さんのお部屋で女将さんトッチメましたのよ。
「 楠って女は東京の何処にでも転がってる女なのよ。貴女って女は、茗荷谷で功が持ってる秘密情報を知ろうとして商売女のテクニックで迫ったでしょう。援けて挙げ様として―――そればかりでは無かったのよ。柳橋の親分ぶってる落ちぶれた芸者さんが、ドンナお道具を持ってるのか見たかったんで、功の誘いに乗って二輪車遊びをして挙げたのよ。
黙って無いでなんか言ったらドウなの。」
「 三日前から功は落ちてたのよ。マリーの阿婆擦れに有れだけ言われたから楠さんにお返しするわ。
確かに柳橋って温室に居たからボケてたのは認めるわ。でもマリーの思惑なんかお見通しよ。ぎりぎりまで追い詰められたから、久しぶりに心臓ドキドキだったのよ。あの女が喋って居る内に狙いは吉田さんだってのが判ったのよ。
女の感性では貴女はもう論外なのね。オーストラリアに連れてった経緯を聴いたら、
良く使う手なのね。あの人のテリトリーはオーストラリアなのよ。其処で貴女を放り出して出方を見てたのよ。
其れに乗せられたら楠さんはマリーって女の手下に成ったのよ。」
「 笑っちゃうわ。まだ判らないのね。マリーとは6年一緒に暮らして来たのよ。お互いの36の歳を使ってね。私もマリーも温室に居たのでは無いのよ。毎日が戦いの中でお互いの手の内はさらけ出して来たのよ。オーストラリアに行ったのは、10人の娘たちと決まりを何処で付けるのか相談に言ったのよ。お互いに幅が広い条件の中でね。
まだ判って居ない様ですから
手の内をチョッピリ明かして挙げたのよ。
10人の娘たちに引っ掻き回されてたと思うでしょう。日本に居たら―――柳橋に閉じこもって居たらドンドン頭が古臭く成るのね。私に広いオーストラリアを見せて、娘たちがドウ変わるのかを新しい頭で見て置こうとしたのね。」
「 五月蠅いって言いたい処よ。伊達に60年、置屋の女将に座ってたと思うのよ。
マリーは私の事を、岩崎弥太郎に一番近い位置に居たって言ってたわね。現実は違てたのよ。内の店は柳橋の5軒のお店を束ねて来た歴史が有るのよ。私を囲って女将に据えれば、柳橋の面倒を見なければ成らなくなるのよ。
判りずらく言って挙げたのは、5軒の置屋を面倒を見るってのは、岡場所を仕切って行くのに毎年幾ら懸かるのか、想像も出来ない金額なのよ。東大の学生がお生を見せ様として芸者を囲って見せたけど、余りのお金が懸かるのにドウしたと思うのよ。セックスを求めなく成ったのは、其れに見合うお金は出さないって事なのよ。外国に逃げてれば執事の住吉さんが、チビッタお手当てを持って来るだけに成ったのよ。
どん底に堕ちた柳橋は温室では無かったのよ。40年も其処を何とか仕切って来たお手並みが、貴女こそ判って居ないのね。」
「 其うだったのね。マリーは知らなくても、珠樹は知ってたでしょうね。
マリーを甘く見たら、トンでも無い落とし穴が口を開けて待ってるのよ。バルセロナでマリーと話して来たって言うのは、敢えて詳細は言わないけど、知らない事は無いくらいに聞いたって思わなければ、命が幾つ有ったって生きてはいられないのよ。
マリーを良く知ってるから、言った事は本気だって事なのよ。楠はキチンと踏ん切りを付けてますからマリーの片棒を担ぐわよ。あの女あんたなんかには計り知れない権利と力を持てるのよ。
組織も権力もトコトン知ってるから、見せたオーストラリアの軍用のピストルを使うのも計算して居る筈なのよ。
日本の警察なんかオーストラリアに逆らったら潰される位知ってるのよ。
目をお覚まし為さい。マリーと楠に協力するってね。」
横を向いてテーブルの下に反吐を飛ばして遣ったのよ。
マリーは言葉で始末を言ったけど、私は実力で此れ位は遣って見せるって教えたのよ。自分の部屋を汚して見せてね。
女36をバカにおしじゃ無いってね。