「 12歳で買春してたなんて、犯罪ではないとしても許されないわね。」
「 マリーはホントに其う思ってるの。」
「 だって其うでしょう。功に呼ばれて来て直ぐ聞き質したのよ。まだ戸田橋の下に巣を作って住んでた時だったわ。買春には触れなかったけど、根津中の3年生だってのは教えて呉れたのよ。私だって其れを信じるほどのおぼこでは無いわ。文京区役所から戸籍謄本を取り寄せて調べたのよ。確かに12歳に成ってたわ。中国の吉林省から引き揚げて来た事に成って居て、一旦舞鶴市庁舎の戸籍に両親不明で登録されて居たのね。其れを楠さんと養子縁組する形で文京区役所に戸籍を移したのね。
舞鶴市役所の戸籍も文京区役所の戸籍にはチャンと記載されてたのよ。復員者名簿にも記載されて居たし、ハッキリ言うけど戸籍上は12歳で疑う余地は無いのよ。」
「 笑っちゃうわ。じゃあ聞くけど、何時引き揚げて来た事に成ってるのよ。復員者名簿の記載日時と
舞鶴市役所に戸籍が作られた日にどれほど開きが有るのよ。私の戸籍も同時に作られたのよ。ですから引き上げの記録は紛失と成ってるのよ。其れでも昭和24年に戸籍が作られたと成ってるのよ。此れってチョットやそっとでは弄れないでしょう。」
「 楠さんこそ何も知らないのね。戸籍の抹消なんか随分行われて居るのよ。行方不明で抹消するのもホントはヤヤコシイ手続きが居るのよ。チャンと7年前に失踪届が出て居るかも必要だし、毎年の官報に不特定で死亡の掲載の中に、其れと疑わしい死亡者が居ない確認もされて居ないと、戸籍の抹消は出来ないのよ。単に死刑の執行がされて戸籍を抹消されるのも、家族も三等親までの署名が必要なのよ。
戸籍を消すのには複雑な手続きが要るけど、戦後の3000万人もの引揚者に対応するのに、戸籍を作ったり間違いを訂正するのなんか、毎日何百人もの人に起きてたのよ。
ですから訂正の記載にちょっとした記述が有れば、自動的に訂正されてたのよ。」
「 さすがと言って挙げたいわ。でも戸籍が12歳に成ってたのは誰れが証明したと思うのよ。
女衒のカバンから盗んで来た人身売買書に其う書いて有ったからなのよ。」
「 待ってよ、幾ら戦後の混乱だったとは言え、人身売買は犯罪なのよ。其れを東京農協が認めるなんて――――」
「 農協が認めた何て言ってませんのよ。其う書いて有ったと言っただけでしょう。」
「 其れで判ったわ。彼女たち発育はチャンとしてたのよ。マリーだってバカでは無いわ。
生理が何年前から有ったのかとか、
カナダの6か月でかなりな処まで探りを入れてたのよ。12歳って吉原遊郭に売り込む歳なんでしょう。
根津中の三年生と言っても、女に歳を質すのはタブーでしょう。彼女たちが15よと言ったら其れに従うしか無いでしょう。あの子たちの発育は、かなり開きが有ったのよ。皆んな知ってても10人の連帯で乗り切って来てるのですから、詮索するのが仲間から弾じかれるのに繋がるでしょう。
売春にタッチするのがタブーなら、
何歳でどの様な買春だったのかを掘り出すのも
絶対ノーなの位、楠さんだって知ってるでしょう。」
じゃあ、少しは教えとくわって楠さんの買春を教えて呉れたのよ。