「 お嫌でしょうけど、今まで控えて居た疑問を全部明かしますのよ。娘が生まれるまでに、お聞きして置かねば成らない事を全部話す心算ですのよ。」

    「 おう、何でも聞くぞ。俺も聞きたい事が山ほど有るのだ。男と言うのがーーーー誤魔化さずに言うぞ。俺なんだが、確かにお前の言う通りで、女性を見れば性の対象と見て仕舞うのさ。其処で提案なんだが、マリーも含めて三人で話したいのさ。時間が無いから際どい話に成ってもお互いにブレーキを外さないと思うのさ。」

    「 好い事だと思いますわ。女性同士と言いましても、全てが違う世界で暮らして居たのですから違和感は残ると思いますのよ。当然でしょうがマリーさんも私以上に其の事は気に為さって居ると思いますのよ。二人だけで話すことも有りますでしょうが、

貴男の理性力と言いますよりは大人度が生かされるのを信じましょう。」


    「 嬉しい事を言って呉れるな。俺は平気で期待を裏切るぞ。俺も其うだがマリーは更に異常な世界で生きて来たのだ。ガードを固めてとは言わないが、お前がショックの受け皿に成って呉れるのを期待した方が早いだろうな。」

    「 うふっ、私こそ期待外れに成ると思いますのよ。女の直感ではマリーさんも似た様なお考えだと思うんですのよ。三人で話すと言っても、夫婦の内緒ごとは残りますでしょう。其れをどの程度外すのかは時間が必要なんでしょうね。」

    「 其うでも無いと思ってるのさ。商事の場合と同じ見合いも有るだろうな。調査の上と言ったって、お互いの探り合いから入ったら時間を無駄に過ごすだけに成るのさ。其れをドウ進めるのかは、相手の器量に拠るのだな。俺は最初から混乱に持って行くことが多かったな。其の方が馴染みやすい切っ掛けが見つかるからなのさ。」


    「 マリーさんとお会いするのはすべて任せますわ。私が言いたい第一は、と言うよりもお聞きしたいんですのよ。どうして芸者さんをお囲いに成るのに、柳橋をお選びに成ったかを聞いて置きたいのですのよ。私は首まで柳橋に使ってますから偏屈な考えを持ってますのよ。

            聖心では柳橋はお女郎の宿だと言われてましたのよ。関東で一流の料亭と言えば、築地と紀尾井町に限られてましたのね。

       聖心に入って判りましたが、学習院を嫌う東京のトップクラスのお嬢さんの女子校でしたのね。むしろご父兄のプライドは、学習院を天皇の遊び場と位置付けて、比較すらし無い風潮が見えましたのよ。

       生徒さんの素質うんぬんよりも、話題の全てが日本のトップを外さないのが習わしに成って居たのですのよ。ですから柳橋でおけいこ事を習っているのが不思議がられたんですもの。」


   「 おう、判るぞ。江戸の歴史から言っても柳橋は花柳界と言うよりも、隅田川の海運関所の趣が強かったのさ。

           だから関東の花柳界とは離れた存在の三業だったのさ。勝の若造が海運奉行に任じられていた関係から、柳橋に席が有った珠樹を芸者として囲ったのさ。

       奴は小さな男なんだな。竜馬が女房にした芸者小町―――待てよ、違ったかな。まあ其れに対抗するのに芸者珠樹を留め名としたんだろうな。 

       話が逸れたが柳橋は花柳界とは別の存在だったのさ。

       そうそう、俺が半玉だった女将を芸者として囲ったのを言うのだろう。ハッキリ言うと大学時代に吉原には行けないから、性の捌け口として奴を女将に据えたのさ。もっと聞きたいか・・? では言っちゃうが、一高の寮生活でも俺のチンポコがでか過ぎるのは笑われてたのさ。女将と遊んで見たら俺にぴったりだったんだ。今思うと申し訳ない事をしたと反省してるのさ。

           そうだ、断って置くが柳橋の芸者衆は特別の誇りを持って居たのさ。旦那は一人で生涯二人にまみえずの誇りをな。だから俺が奴を半玉から何段階も格上げして店を持たせたのに、噂は凄かったのさ。

       凄いって良い方にだぞ。東大の学生の癖にが噂に噂を呼んで、岩崎の跡目の第一候補とデカチンが柳橋をさらに格上げさせたのさ。」

  

    「 其うだとは聞いてましたのよ。お店に籍を置いて居た20人のお姉さん方は、お一人の旦那様でお通しでしたのね。只お一人、お母さんに倣って旦那を変えて居ましたのね。

            お母さんからコッソリ伺ったのですが、某伯爵家のお嬢さんのご身分を隠して、芸者に成られたそうですのね。皆様薄々はご存知の様ですが、一目も二目も置いて

          男を遣り殺す怪女

だと、お道具の凄さをそっと教えて呉れましたのよ。

        其れって芸者にとっては何物にも換え

難い女の誇りと見なされて居ましたのね。


          逆にガバガバだと

ご免なさい、ハシタナイ事を言っちゃいましたのね。  

       女の世界ではしまりが良いのがトップだとされて居たんですのよ。

       ドウなんでしょう。珠樹ってしまりが好い方だと思ってますのよ。此れって口には出せませんが、女の世界だけでは無くて威張っても好い器量の内だと思いますのよ。」

       此処まで言葉を解しましたのよ。彼ったら黙って頭を下げたんですもの。