「 私、単純にお仕事を外で働いてお金を手に入れるのと決めてたのよ。」

   「 其れで好いんじゃ無いかな。主婦の家事労働も金銭に換算して、どれくらい働いてたのかにするのも有りの時代に入ってるのさ。料理を作ってもデパートで買って来た惣菜を並べても家事と認められるのさ。後片付けを旦那任せで有っても立派な料理をして居たことに成るのさ。」

   「 其れを言ってるのじゃないのよ。私が遣ってるのは家事だとは言いませんわ。仮りにだけど、ペットを飼うのも家事だと言えるかしら。難しく言う心算は無いけど日本に居た時、犬を何匹も引っ張って歩いてた人も見掛けたわ。業者さんかもしれないけど、じゃあ犬を乳母車に乗せて歩いてる人は何なのよ。其処まで考えたらペットって何なのかしら。柳橋の傍の神田川に停留してた達磨船に乗ってた子供が、バケツの金魚を手でかき回してるのを見たのよ。

           其れでもペットと言えるのかしら。

別に子供が生まれるから言うのと違うのよ。犬を乳母車に乗せてお散歩するのは、私には女の労働だとは言えないと思うのよ。

           だったらペットって何なのかに成っちゃうでしょう。同じ事でテニスをするのもジョギングをするのも、ゴルフだって生きてくのに必要だと言えるのかしら。

      私が言いたいのは10歳から7年を、すりのお手伝いで男の注意を逸らすのに、おっぱいを使ったのはお仕事と言えるのかしら。でしたら売春だってお仕事に成っちゃうでしょう。」


    「 うーん、珠樹らしい話とは違う様だな。俺が今日資材運びを手伝ったのを言ってるのだろうな。

            待て待て、何の気なしに手を出したが、遣って見たら楽しく成っちゃったんだ。今までに味わった事が無い爽快感だったな。こじ付けとは違うぞ。金を貰ったのでも無いし何も期待したのでもないのさ。言わば通り道の雑草を引き抜いて捨てた様な物なんだ。

      程度の差は有れ、誰れでも遣ってる事なんだろう。」

    「 そうね、仰っしゃられれば返す言葉は無いわね。何も家事や労働をドウコウ言う心算は無いのよ。ずーと思ってた事なんですけど、

            貴男と逢う前は、私は何をしてたんかしら。人並みだとは言わないけど、チャンと眠ってたし起きればお顔を洗って出すものもチャンと始末してたのよ。

      遣り様にも拠るけど、雪の日も有れば野犬に吼えられる日も有ったのよ。ジッと貨車の中で野犬が居なくなるまで何時間でも様子を伺ってたのね。時には半日も野犬が居なくなるのと睨めっこしてたのよ。其れだって生きてく為のお仕事だと割り切ってた心算なのよ。ですから其の必要が無くなったのは、得したとも思わないし誰れに感謝するでも無かったのよ。」


    「 ふーむ、何と言えば好いんだろう。十人十色と言って仕舞えば其れまでだな。

            お前の言いたいのは17歳まで遊んでたのとは違うって事なんだろう。待て待て、

        乳母車に犬を載せて散歩してた小母さんは、チャンと生きてたとは思いたくないと言うのだろう。其の良し悪しでは無くて、お前なりに生きてたと言うのだろう。

      一つだけ言わせて呉れよ。お母上の手助けをしてたのでは無いって事なんだろう。10歳の子供なんだから、其れしか無い環境で精一杯生きて来た―――――」

      泣き出しちゃったので抱き締めるしか有りませんでした。珠樹の言いたいのは

            人夫々に、生きてく条件が違うのを言う心算なんですよ。自分にカコツケテ言ってますが、一つには心の奥底を一緒に暮らして居る俺にも打ち明けられない悩みと言うよりは、心の煩悶が有るのを言いたかったのでしょう。

      其うなんですよ。殆ど半日、彼女をホットイテ汗して満足してるのに食って掛かれない悔しさを遠回しに言ったのですね。

            愚痴を聞いてやれですと・・?

其んな単純な物では無いのです。人の心の弱いところと申しますか、此れを放って置いたら自殺に走ることも有るでしょうし、宗教にのめり込むことも有るでしょうね。グルとか言う宗教屋のお告げに従って犯罪に手を染めれば、重罪人として扱われる事だって有るでしょうね。

       其うなんですよ。強い意志と心で乗り切って来たように見える珠樹でも、救いを求めて居るのですよ。何と応えれば好いのでしょう。

       其れが此のブログなんです。一人でも読んで下さる方が居る限りは、スタミナを蓄えて書き続けるしか答えは有りませんね。