「 他の病院は知らないけど、此の婦人科の診察室は繋がってる見たいなのね。」

   「 教えると嫌われると拙いので言わなかったんだ。両隣の話し声が聞こえるだろう。隣の診察室とカーテンで仕切られたドアが有るのさ。つまり教授クラスの医者が、どの診察室の患者にも対応できる様に診察室が繋がってるのさ。右の部屋は開業医が来て居るのだな。日にちを決めて研修に来てるのさ。だから教授連中が指導に当たってるから小声でしか聞えて来ないんだな。」

   「 其れで話が聞こえないのね。左の診察室から妊婦さんの悲鳴が聞こえるんですのね。診察の内容が違うのかしら。」


   「 どうやら学生に診察させてる見たいなんだな。詳しい様子は判らないが、機器を納入した時立ち会った経験が有るので知ってるのさ。膀胱のカテーテル挿入を学生に経験させるのさ。先っぽが膀胱の中で開いて抜けない様になってるから、経験を積まないと難しいのさ。町の病院では看護婦が遣るのだが、婦人科に限らず手術の時は失禁を防ぐので、全身麻酔の時はからなずカテーテルの処置が必要になるのさ。どこの大学病院でも同じ事なのさ。

俺も何度も経験してるが、看護婦だと事務的に怒ったような態度でチンポコを持ち上げて突っ込みやがるのさ。夜間の当直だと若い看護婦だろう。中には震えてできない看護婦も居るのさ。当直の医者もインターンだから、ヘタクソなのは同じなのさ。」


   「 知らなかったわ。さては性病検査されたんでしょう。飾り窓の女に手を出すから、其んな結果に成るのよ。」

   「 辞して呉れよ。其んな事は話に聞いただけなんだぞ。ちゃんと性病検診を受けてる連中だから、衛生具を使ってだから病気は移され無いのさ。」

   「 うふっ、カマを駆けたら直ぐ白状する坊やなんですのね。好いのよ男なんですから、安物を買うくらいなら政府公認の施設が安全でしょう。」

   「 おいおい、本気にするなよ。じゃあ言っちゃうけど、小便が出なくなって夜中まで頑張ったが到頭病院に駆け込んだのさ。

          前立腺と言ってな、小便の通り道に関所が有るのさ。其処が腫れるとおしっこが出なくなるのさ。学生時代なんだ。柔道の受け身をしくじって、イヤってほど急所を道場の壁に叩き付けられたのさ。痛いも何も息が出来ない位の衝撃だったな。  

            まさか有んなに成るとは知らなかったんで、冷やさないで酒で誤魔化したのさ。其れがドウダ。遣りたいんだが小便が出ないのさ。苦しいなんてじゃ無かったな。夜中に成って病院に駆け込んだのは好いけど立っても居られないし、名前と住所を書けと言われても目がクラクラして書けないのさ。

     情けないも何も、死ぬ苦しみってのはアノ事なんだな。」


   「 ご免なさい。前立腺の肥大は聞いてるけど、其れって柳橋のお姉さんの旦那様のご病気なんですのよ。

           男の人はお怪我で片チンに成ると子供が出来ないって聞かされてるのよ。お姉さん方の受け売りだけど、良くお怪我だけで済んだのね。

      おしっこが出ないとほんとに苦しいらしいのね。エンサンチャ病院の婦人科では、学生たちに膀胱カテーテルの実習をさせてるのね。」

   「 いや、其う思っただけさ。俺が苦しんだのはホントに凄かったんだぞ。だから二度とぶつけない様に気を付けてるのさ。汚い話だが、救急室でベテランの看護婦が呼ばれて来て、いともアッサリ管を入れちゃったんだ。いや、出るわ出るわ、バケツの様な容器に溢れるほど出たのさ。

           あの時ばかりは、おばさん看護婦がマリヤ様に見えたんだ。

     おしっこが出ない苦しみは、痛いのとは違うんだな。何て言うのか、腰をかがめて話もできないし自分の名前も書けないのさ。

     済まん、話を逸らして拙かったな。安心しろよ。手は打っといたからお産の時もちゃんと手を握ってて遣るぞ。痛みを分けるのは出来なくても、俺だって前立腺の腫れで苦しんだ経験が有るのさ。あの時のおばさん看護婦の代わりに、亭主看護婦が立ち会うから好いだろう。」

     ヘンに捩れた話でご免なさい。珠樹だってお産は覚悟してますのよ。彼の時と同じに死ぬほどの陣痛が有っても、彼に手を握ってて貰えば自然出産をして見せますのよ。

           無痛分娩に逃げるほどの弱虫では無いのですのよ。珠樹の取り柄と言ったら健康優良児くらいしか無いのですもの。