「 おかしいわ。マリーさんがご自慢にしてると言うか、―――貴男と同格でお仕事が出来るってのはハーバードをトップで卒業しただけでしょう。大学院にも行かずに軍に入ったのは、カトリックの本山からの援助が切れたのが原因だと仰ったでしょう。

          ハーバード切っての天才なら、ローマの法王庁だって大学院に進むのを応援するでしょうに。

      其れをし無かったのは大した天才とは違うでしょう。」


    「 うーん、此れは伏せて置こうと思ってたんだ。其処まで云うのならマリーが何を考えてたのかを教えとくぞ。

          恐らく法王庁から大学院に進む様に圧力が懸かった筈なのさ。其れを嫌ったのはカソリックに縛られるのを嫌ったと解釈すべきなのさ。

          マリーが洗礼を受けて居て、カソリックの信徒なのは揺るぎも無い事実なのさ。生まれて来る娘もバルセロナの市民権を与えられるのと同時に、スペインの国教のカソリックの洗礼を受けねば成らないのさ。

     俺たち二人は仏教徒と受け取られてるから

カソリックに取っては異教徒の存在なのさ。日本って国は宗教にはおおらかなんだ。大昔は庶民の信仰は土着の神社を祭るだけだったのさ。其処へ仏教が入って来ても、信仰とは別に仏教も神社の境内に作ったのだな。

      判るだろう。日本人の宗教は土地の山であり、其処に生えてる木も鳥も水も魚も、その場の都合で祭ったのさ。だからキリスト教が入って来ても、宗教としてでは無く神様と同格の牧師を山や水と同じに大事にしたのさ。中には凝り性の奴が、キリスト君を育った山と水と同じに敬っただけなのさ。

      難しい話で済まないが、俺もお前も仏教徒を意識しては居ないだろうな。

           だがバルセロナで子育てをすれば、何れは追い出されるか若しくは洗礼を受けねば成らないだろうな。

      仮りに、マリーが東大に入って居れば、当然の様に大学院に進んで助教授として東大に残っただろうな。コンガラカラナイ様に言って置くと、此れからの世界は宗教の戦争が続くと見なければ成らないのさ。恐らくマリーが争いが起きると見たのは、

            対イスラムとの争いでは無い筈なんだ。カソリックとユダヤ教とイスラムが三つに成って一つのイスラエルを争う事に成るのを知ってたと思うべきなのさ。

      手っ取り早くマリーの宗教の想いを知る手立てとして、ルクセンブルグのユダヤバンクを示して見たのさ。カソリックの信者として意識が強かったら、先ずカードは受け取らなかっただろうな。

            マリーがすんなり受け取ったのはユダヤのドルでは無いのさ。いわば俺が持ってた裏のドルなのをチャンと知ってたんだな。


      病院の予約が入ってるんだろう。ユダヤの話しは落ち着いてから出も出来るさ。

      5年芝浦キャンプに居たのだから、日本の宗教に対するウヤムヤも知ってる筈なのさ。少なくても俺とお前が宗教の自由の世界で生きて居るのを知って、彼女も俺たちと居ればカソリックもユダヤも適当に付き合えるのと同じ世界の自由を求めて居る筈なのさ。深くは考えるなよ。今までと何も変わらないとな。」

      少しだけ判りましたのよ。ユダヤ教もキリスト教も、仏様も天照の神様も変わらないと思ってましたのよ。其れが今でも仲たがいしてるなんて、珠樹にはどっちでも良かったんですのよ。